役員(取締役)の重任登記の期限はいつまで?忘れると罰金や過料が発生する?
役員の任期満了後に、同じ人が再び役員の地位に就いた際に忘れがちなのが役員変更登記(重任登記)です。重任登記を忘れると「選任懈怠」とみなされ、過料が発生することも。本記事では、重任登記の方法や手続きにかかる費用などについて解説します。
役員(取締役)の重任登記とは?
株主総会などにおいて、役員の退任と就任が同日に行われることを重任といいます。読み方は「ちょうにん」ではなく「じゅうにん」です。
任期満了後に日をまたいで就任したケースは、「退任した上での就任」とみなされて重任とは別扱いとなります。株式会社における取締役や監査役などは、会社法の規定に基づいて任期が定められています。同一人物が重任する場合であっても、会社法第915条の規定に基づき、重任した日から2週間以内に登記手続きを行わなければなりません。
役員(取締役)の任期について
会社法上では、取締役、監査役、会計参与が役員として規定されています。このうち、取締役の任期は選任から2年後の株主総会での選任決議時まで、監査役の任期は4年とされています(会社法第332条)。
ちなみに、定款または株主総会決議で取締役の任期を短縮することが認められています。
なお、株式譲渡制限が設けられている非公開会社では、定款や株主総会の決議によって取締役の任期を最長10年まで延長、または短縮することが認められています。一方で、監査役の任期短縮は認められていません。
役員構成の決め方|人数はどのくらいだと適正?【法人設立時に必要】
役員(取締役)の重任登記の手続き
役員重任登記は法務局で行います。このとき、役員変更の登記申請書のほかに、株主総会や取締役会の議事録が必要になることがあるので、あらかじめ準備しておきましょう。
取締役会を設置している場合
株式会社では取締役会の設置は任意です。ただし、公開会社では取締役会の設置が義務付けられており、3名以上の取締役を置かなければなりません。取締役会の決議要件は、以下のとおりです。
- 議決権のある取締役の過半数の出席
- 出席した取締役の過半数の賛成
取締役会において重任の決議がなされた後は株主総会へ議案が提出されます。普通決議で株主の過半数の賛成を得られれば、重任が成立します。その後、役員の就任日から2週間以内に重任登記を行います。
取締役会の必要性って?設置したほうがいい会社、不要な会社
取締役会を設置していない場合
取締役が複数いる場合は代表取締役を選出するのが一般的です。方法としては以下の3種類があります。
- 定款
- 株主総会決議
- 取締役の互選
株主総会決議で選定する際には、株主総会の議事の中で役員の任期満了および重任における株主の承認を得なければなりません。取締役会非設置会社では、株主総会が会社の一切の重要事項について決定権限を持っているためです。
複数の取締役から代表取締役を選任する場合は、あらかじめ互選によって代表取締役を選出した後、株主総会で株主の追認を受けます。重任についても同様です。
役員(取締役)の重任登記における必要書類
取締役会設置会社か非設置会社か、また重任されるのが一部の役員なのか全員なのかによって、必要書類が異なります。
【取締役会設置会社】
|
【取締役会非設置会社】
選任方法が「株主総会の決議」または「取締役の互選」によるものか、また重任されるのが一部の役員なのか全員なのかによって、必要書類が異なります。
株主総会の決議によって決定する場合は、取締役会設置会社の必要書類から「取締役会議事録」を除いたものを用意します。
互選では、取締役会設置会社での必要書類に加え「定款」および「取締役の互選書」を準備します。
また、役員の一部だけが重任する場合には、新規役員の印鑑証明書や本人確認書類などが必要になります。
役員(取締役)の重任登記を忘れたらどうなる?
重任登記を忘れると、選任懈怠(せんにんけたい)とみなされます。その結果、代表者に過料が科されたり、強制的に会社が消滅させられたりするケースもあります。
重任登記を忘れると罰金や過料が発生する?
重任登記では、役員の辞任や新規就任と比べて手続きの必要性が認識されにくいものです。そのため、何も手続きされないままになっているケースも散見されます。
ただし、重任登記を怠ると選任懈怠とみなされ、会社の代表者に100万円以下の過料が科せられることがあります。引き続き役員を登用するには、任期満了と同時に以下の手続きを行わなければなりません。
登記懈怠(とうきけたい)とは何か?選任懈怠との違いや過料相場について
1.取締役会の決議および決定(取締役会設置会社のみ) |
12年経過していると、解散登記が行われてしまう
役員の変更登記などを行わないまま、最後の登記から12年が経過すると休眠会社とみなされるリスクがあります。この場合、休眠整理作業の対象となってしまうため注意が必要です。そのまま放置すると、登記官の職権によって解散登記(みなし解散)が行われ、会社そのものが消滅しかねません。
みなし解散とは?放置すると、過料や罰金は発生する?事業継続する手続きも
なお、解散登記が行われても、3年以内に会社継続登記や新たに取締役などの就任登記を行えば会社を復活させることができますが、余分な手間や費用がかかってしまいます。
役員(取締役)の重任登記でよくあるQ&A
役員(取締役)の重任登記を自分で行うことは可能?
役員の重任登記は、自分で行うことも可能です。ただし、必要書類を全て準備しなければならず、書類に不備があった際には修正が求められることもあります。また、役員重任のケースごとに準備する書類が異なるため、その点にも注意を払わなければいけません。
役員(取締役)の重任登記の期限はいつまで?
重任の決議がされた日から2週間以内に行います。期限を過ぎても申請は可能ですが、代表者個人に対して過料が科される可能性があります。
実際には、2週間を過ぎてもただちに過料が命じられることはありませんが、必ず期限内に手続きを行いましょう。
役員(取締役)の重任登記の手続きにかかる費用はどのくらい?
専門家に依頼するか否かに関わらず、重任登記の申請時には「登録免許税」が発生します。なお、登録免許税は、会社の資本金の額で以下のように区分されています。
- 資本金額が1億円以下の会社:1万円
- 資本金額が1億円超の会社:3万円
なお、登記申請を司法書士に依頼する場合には、司法書士への報酬が別途発生します。
登録免許税はいつ払う?計算方法や支払時期についてわかりやすく解説
まとめ
役員の重任登記は、必要書類や手続きのパターンが多岐にわたります。万が一、不明点がある方は税理士や会計士などの専門家にご相談ください。当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、全般的な税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。