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取締役の欠格事由(取締役になれない人)|選任後に発覚した場合はどうすれば良い?

株式会社などにおいて、会社の業務執行および意思決定権をもつのが取締役です。ただし、その責任の重大さゆえに就任には一定の制限が設けられています。本記事では、取締役の欠格事由に焦点を当てて解説します。

取締役の欠格事由(けっかくじゆう)とは?

取締役の欠格事由(けっかくじゆう)とは、会社法で規定された取締役になることができない条件を指します。会社法331条では、以下に当てはまると「取締役になれない」と定められています。

  • 法人
  • 会社法・一般法人法・金融商品取引法・倒産法など会社に関連する法律違反の罪を犯して、その刑の執行が完了してから2年経過していない者
  • 上記法律以外の罪で禁錮以上の刑に処せられ、その執行が完了していない者

なお、会社法や金融諸法上の罪を犯した場合は、罰金刑や執行猶予中であっても欠格事由に該当します。取締役としての信用性に欠けるという観点から、会社法の秩序を破った場合は、他の法令による処罰よりも要件が厳しくなっているのです。

取締役になれない人

以下で、欠格事由に該当する項目をそれぞれ詳しく解説いたします。

成年被保佐人・成年被後見人

成年被後見人とは、認知症や知的障害・精神障害などによって財産の自己管理が困難であり、裁判所から後見開始の審判を受けた人を指します。

一方、成年被保佐人は成年被後見人と比べると事理弁識能力があるものの、一般の人々より著しく劣っているため、財産管理や一定の法律行為などを行う「保佐人」が付けられている人を指します。

2019年12月4日の会社法改正によって、成年被後見人や成年被保佐人は欠格事由から除外されました。

ただし、同制度の性質上、成年被後見人は成年後見人が本人の同意を得たうえで就任の承諾をしなければなりません。また、被補佐人が取締役になる際は、保佐人の同意を得るか、被保佐人の同意を得てから取締役就任の承諾を行う必要があります。

法人

会社法において、法人は「株主」にはなれますが、取締役にはなれません。これは取締役の活動内容が自然人の個人的な信頼関係に依拠するものであるからです。なお、ここで指し示す法人とは、株式会社や持分会社だけでなく社団法人、医療法人、財団法人などあらゆる形態の法人が含まれます。

しばしば、取締役就任の条件の1つである「株主であること」と混同されるケースがあるため、注意しましょう。

会社法や金融諸法上の罪を犯した者

会社法や金融諸法上の罪を犯し、その刑の執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者は、取締役の欠格事由に該当します。

  • 一般社団法人および一般財団法人に関する法律違反の罪
  • 金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載罪、インサイダー取引規制違反など)
  • 破産法・民事再生法・会社更生法など各種倒産法違反(詐欺破産など)

会社法およびその周辺法令に違反した場合は、罰金刑や執行猶予中であっても欠格事由に該当するため、注意が必要です。

会計参与・監査役

会計の公平性・透明性を担保する観点から、会計参与や監査役が取締役を兼任することはできません。

親会社の監査役が子会社の取締役を兼任することも、子会社の取締役が親会社の監査をすることも同様の理由で禁じられています。

関連記事:監査役とは|会計参与との違いや仕事内容をわかりやすく解説

会社法改正によって、取締役の欠格事由から「自己破産者」は除外

旧商法254条の2第2号の規定では、破産手続開始の決定を受けて復権していない者は、取締役の欠格事由に該当していました。しかし、2006年5月に施行された会社法で、欠格事由から除外されました。

就任中の取締役が自己破産したら?

就業中の取締役が自己破産した場合は、民法653条の「委任契約」の終了事由に該当します。そのため、自己破産をしたタイミングで自動的に契約解除・退任扱いとなります。

先に述べたように、自己破産は欠格事由に該当しないため、株主総会などで破産した取締役を再び選出することが可能です。ただし、自己破産者を取締役に選出すると、次のようなリスクも考えられます。

  • 株主総会で株主の同意を得られない可能性がある
  • 信用情報に登録され、保証人になれない
  • 融資を受けることが難しくなる

取締役に選任後、欠格事由が判明したらどうなるの?

選任後に取締役の欠格事由が判明したら、選任の決議自体が無効となるため、新たに選出し直さなければいけません。

取締役選任の決議が無効になる

会社法331条1項1号ないし4号において取締役の欠格事由が明示されています。仮に株主総会でこの規定に該当する者を取締役に選出したとしても、その株主総会における選任決議は法令違反となるため、取締役選任の法的効力を生じません。

取締役就任登記の抹消申請

取締役の欠格事由が判明したら、当該取締役の業務をただちに停止させます。また、取締役の地位に変更がある場合は、商業登記法第54条4項に基づいて登記が義務付けられています。

欠格事由が判明した取締役は就任登記自体が無効扱いになるため、商業登記法134条1項2号に基づき、抹消登記の手続きを行わなければなりません。

新たな取締役を選任する

欠格事由に該当して退任した場合は、通常の退任と異なり、当該取締役は次の取締役選出までの継投の権利が消滅します。よって、取締役の定員数が決められている場合には、株主総会で新しい取締役を選任しなければなりません。

また、必要に応じて裁判所に一時取締役(仮取締役)の選任を申し立てることも可能です。さらに、新たな取締役を選任した際には就任登記もあわせて行いましょう。

取締役の欠格事由でよくあるQ&A

ここでは、取締役の欠格事由でよくある質問と回答について取り上げます。

社外取締役の欠格事由と資格は?

社外取締役は一般の取締役と異なり、運営組織からの独立性が求められます。そのため、親会社や子会社・兄弟会社などの社外取締役は、一般取締役よりも欠格事由が厳しく設定されています。

  • 社外取締役に就任する前の10年間、業務執行取締役等でないこと
  • 親会社の取締役、執行役、支配人でないこと
  • 会社経営を支配する者の二親等以内の親族でないこと

未成年者でも取締役になれるの?

未成年者は欠格事由に該当しません。

ただし、会社の役員になる場合は会社との間で委任契約が発生します(会社法330条)。民法上では、未成年者が契約などの法律行為を行うには、親権者を始めとする法定代理人の同意を求められます(民法5条1項)。そのため、実質的には親権者などの同意がなければ取締役に就任できません。実務上でも、未成年者の役員就任登記においては、就任承諾書にくわえて法定代理人の同意書の添付が必要となります。

まとめ

取締役は非常に重要な役職であり、欠格事由に該当すると会社経営に大きな影響を及ぼしかねません。取締役の就任条件や欠格事由について不明点がある方は、ぜひ税理士や会計士などの専門家にご相談ください。

当事務所では、法人設立や融資相談のほか、全般的な税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。

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