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定款に記載した事業目的に違反すると、罰則やペナルティはある?

定款の絶対的記載事項に含まれる「事業目的」。作成したことを忘れて、知らぬ間に事業目的とは全く関係のない事業を行っていた……。

この場合、はたして罪に問われるのでしょうか?本記事では、事業目的に違反した場合の罰則やルール、違反した際に生じるデメリットについて解説します。

定款の事業目的とは?

事業目的とは、発起人の連絡先や本店所在地など、必ず記載しなければいけない「絶対的記載事項」のうちの1つで、会社でどのような事業に取り組むのか、その内容を明示するものです。

定款の事業目的は、後述する「明確性」「営利性」「適法性」に沿った文言を使用しなければなりません。また、事業拡大したときも見越して「附帯関連する一切の事業」といった文言を添えることが一般的です。 

定款の事業目的に違反すると、どうなる?

定款の事業目的に違反したとしても、直ちに違法とはなりません。しかし、金融機関や株主などの債権者から、会社の法律行為について無効を主張される可能性があります。定款の事業目的に違反した行為が悪質とみなされた場合には、特別背任罪などの刑事罰に問われるケースもありえます。

罰則やペナルティはある?

原則として、刑事罰や行政罰の対象になることはありません。ただし、当該行為が特別背任罪、業務上横領罪などの刑事罰に抵触する場合は、当該行為を決定した取締役などが刑事訴追を受ける可能性があります。また、民事事件として訴訟を起こされた場合には、民法709条の不法行為として不当利得と判断されたり、原状回復義務を負ったりするなど、取引関係が不安定になるリスクが考えられるでしょう。

ただし目的達成に必要な行為は認められる

もし、事業目的に記載のない事業であったとしても、目的達成に必要な事柄であるとみなされた場合は、取引は無効になりません。

定款の事業目的に違反すると起こるデメリット

前述したように、定款の事業目的に違反することで罰則があるわけではありませんが、長期的にみれば、新規取引や資金調達、融資といった面で、不利益を被ることがあります。

取引が無効になる恐れがある

新規顧客との取引では、契約締結前に与信調査を行うのが通例です。一般的に、定款を細かくチェックすることはありませんが、定款の事業目的が不明瞭であったり、事業目的以外の取引が多かったりすると、取引の判断に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、定款違反で得た利益は、民法709条の不当利得にあたると判断されることもあります。これも取引無効の原因となりますので、注意が必要です。

資金調達や融資に悪影響を及ぼす

大きく事業目的から逸れた取引が多いことが発覚すると、企業の実態が不明かつ目的外の事業に融資が流用されるのではないかと不信感を抱き、希望した融資額を受けられないことがあります。

定款の事業目的の書き方

定款の事業目的を定める際には、下記の4つのポイントを意識しましょう。

3つの原則を意識する

定款の事業目的で、最も大切なのが「明確性」「適法性」「営利性」の原則を遵守することです。

まず、明確性とは、誰でも理解できるよう、平易な言葉で記載をすること。次に、適法性とは、武器の販売や違法ドラッグの密輸など、法に触れるような事業を禁ずることを示すものです。最後の営利性とは、 事業活動によって上がった利益を株主などに分配することを目的とする性質です。つまり、寄付活動、ボランティア活動といった非営利活動は認められません。

許認可に適した形式で記載する

許認可や届出に適合した形式で、事業目的を記載しなければいけません。記載形式について、そこまで厳格な決まりはありませんが、内容の乖離がみられたり、不明瞭であったりすると、審査の不許可の原因になるため、十分注意しましょう。許認可の有無や記載方法に関して不明な点があれば、申請先の役所などで事前に問い合わせておくと手続きがスムーズです。

<事業内容|事業目的への記載例>

  • 人材派遣業→労働者派遣事業
  • 飲食店→飲食店の経営
  • 宿泊施設の運営→旅館業/宿泊施設の経営
  • 酒店の経営→酒類の販売

将来行う見込みのある事業も書く

将来的に行う可能性が高い事業については、あらかじめ事業目的に記載しておきましょう。定款には文字数の制限が定められていないものの、事業目的が多すぎると、何をしている会社なのか実態がつかめなくなり、金融機関や取引先からの信用を損ねる恐れがあります。

「前各号に付帯関連する一切の事業」の一文を添える

会社設立時に、そのときに想定しうる事業を全て事業目的に記載したとしても、数年後また新しい事業を追加・変更したくなるかもしれません。そのたびに、追加や変更を行っていては、手続きが煩雑で事業活動に支障が出てしまいます。このような事態を避けるためには、最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」という文言を入れておきましょう。幅広く解釈できるようにしておくと、定款を変更せずとも、新しい事業を展開できるメリットがあります。トヨタ自動車やマクドナルドといった有名企業でも、定款にこの文言を記載していることがほとんどです。

定款の事業目的を変更するには?

事業目的を変更する方法は、株式会社と合同会社で要件がそれぞれ異なります。いずれの場合も、定款の変更から2週間以内に法務局などで定款変更登記の手続きを行います。

株式会社の場合

株式会社が定款の事業目的を変更する場合は、株主総会の特別決議を経ていなければなりません。

  • 株主の議決権の過半数を有する株主が出席すること(定款で3分の1以上と定めることも可能)
  • 出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得ること

 

これらの条件を満たしていれば、議決から2週間以内に法務局に定款変更の申請を行います。2週間を過ぎても申請は受理されますが、代表者に対して100万円以下の過料が課されることがあるため、できるだけ速やかに定款変更の手続きを行いましょう。また、登録免許税として3万円を納付しなければなりません。

合同会社の場合

合同会社の目的は定款記載事項であり、目的を変更する場合には、総社員の同意を得て定款を変更します。(会社法第673条)

会社法の条文を変更した場合には、効力発生から2週間以内に法務局で変更登記の手続きを行う必要があります。その際に、総社員の同意書、定款(同意書で変更内容が分かる場合は不要)を用意しましょう。合同会社の場合も、株式会社と同じく登録免許税3万円の納付が必要です。

まとめ

会社の定款の事業目的は、新規取引や金融機関からの融資を始めとして、官公庁に許認可を得る際にも大変重要なものです。スムーズに事業をスタートさせるためにも、法令上の記載漏れがないか、専門家に相談することをおすすめします。定款の事業目的の作り方がわからないということであれば、当事務所がサポートいたします。ご希望の方は、下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまで、お気軽にご連絡ください。

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