定款の原本証明とは何か?必要になる場面や書き方について解説
登記申請や、助成金・補助金の申請、許認可の申請などで求められる定款の原本証明。定款には、原始定款と現行定款の2種類がありますが、この原始定款と原本を混同して考えている方も少なくないのでは?本記事では、定款の概要と、原本証明の意味や目的、具体的な手順について解説します。
そもそも定款とは何か?
定款とは、会社の目的や組織、運営を始め、構成員や株主の地位などを定めた会社のルールやそれを記した書面を指します。会社設立時には、発起人が定款を作成します。法人形態に関わらず、作成しなければならないものであり、非常に重要な書類となります。
定款の種類
定款は、大きく「原始定款」と「現行定款」の2つがあります。原始定款は、会社設立時に公証人の認証を受けてはじめて、法的効力が認められる定款を指します。原始定款自体は変更を加えることができません。
株主総会の決議を経て原始定款に変更を加えた定款は、現行定款と呼びます。なお、現行定款に関しては、公証人による認証は必要ありません。
原始定款
原始定款は、会社設立時に公証役場で公証人の認証を受けた定款のことをいいます。そのため、定款の最終ページには公証人の署名が記されています。ちなみに、会社設立時から定款変更を一度も行っていない場合は、原始定款の原本証明をつけて提出します。
提出先や手続き内容によっては、原始定款の提示や提出を求められることもあるため、準備しておきましょう。
現行定款
会社設立後は、株主総会の決議で定款を変更することができます。現行定款は現在効力を有しているものであり、商号や本店所在地、目的や役員など会社の変化に応じて、都度変更されます。原始定款と異なり、公証人の認証は不要です。
定款の原本証明とは?
定款の原本証明とは、定款の原本とコピーが一致することを示す証明書のことです。法務局などの行政機関や金融機関に定款を提出する際に、必要になるケースが多いです。定款の写しをホチキスなどで止めて、原本証明の文言と証明者である代表の名前を記します。
そもそも、定款の原本はどこに保管されているの?
定款の原本は、会社と公証役場で一部ずつ保管します。会社の場合は、本店または支店に備え置き、株主や債権者がいつでも確認および謄本や抄本の請求をできるようにしておかなければなりません。公証役場では、原則20年の保管が義務付けられています。
なぜ、定款の原本証明が必要?
先に述べたように、定款は会社と公証役場の双方で原本の保存が義務付けられています。しかし、原則として大量に保管するものではないため、原本を提出するわけにはいきません。そこで、定款の写しに原本証明書をつけて、原本と同様の法的効力を持たせる必要があります。
定款の原本証明が必要なタイミング
定款の原本証明が必要になるのは、次のような場面です。
金融機関での手続き
金融機関で手続きを行う際に、定款を求められることがあります。なかでも法人口座の開設や法人取引においては、厳密な手続きが求められます。定款は登記事項証明書よりも詳細な内容が記載されているため、会社の登記事項証明書と合わせて確認することが多いのです。場合によっては、原本証明は不要でコピーで足りる場合もあるため、原本証明が必要かどうか確認しましょう。
法務局での手続き
法務局で定款の提出が求められるのは、登記申請が代表的でしょう。たとえば、「互選によって、会社の代表取締役を選定する」という旨を定めている場合は、代表取締役の選定登記が必要です。
他にも取締役会の書面決議の可否が定款に定められていることの証明など、法務局で定款の原本証明が求められる場面は多岐にわたります。
行政機関などでの手続き
国や自治体の許認可を受けるとき、助成金・補助金の申請時に、原本証明つきの定款を求められることがあります。
許認可の法的根拠である事業目的の明示、助成金もしくは補助金の要件を満たすか確認するため、行政機関は会社の目的などを記載した定款を確認する必要があります。
ただし、原本証明が必要な場合、コピーで足りる場合、原本の提示だけでOKの場合など、手続きの種類や提出先によって対応が異なります。それぞれのケースごとに確認しましょう。
定款の原本証明のやり方
まずは、必要な定款が「原始定款」なのか「現行定款」なのかを確認しましょう。特に原始定款が求められていないのであれば、基本的には現行定款を用意します。ページやサイズの指定がない限りは、原寸大で全てコピーします。
現行定款の写しを用意する
会社設立時から変更がなければ設立時の定款のままですが、変更した場合には変更後の最新の内容の定款を用意しましょう。
原本証明の文言を記載
定款のコピーの最終ページには、次のような文言を記入します。
- 定款の原本と相違ないことを示す証明文
- 原本証明の作成日付
- 本店の所在地
- 会社名
- 代表者名及び代表者印
証明文や証明年月日、代表名は印字でも構わないのが一般的です。最後に、証明者が押印します。ただし提出先によっては、代表者の直筆を求められる場合もあります。詳細については、提出先に確認しましょう。
押印をする・製本をする
印刷したページを重ねて、左側をホチキスで綴じます。さらに、法印実印で各ページの綴じ目に割印をします。最終ページには「この定款の写しは原本と相違ないことを証明する」と記載し、法人実印を押印します。
定款の原本証明の書き方例
定款の原本証明の文言の一例として、次のようなフォーマットを用意しておくと良いでしょう。
この定款の写しは原本と相違ないことを証明する。
令和◯◯年◯◯月◯◯日
東京都中野区1-1-1
株式会社 東京マシナリー株式会社
代表取締役 東京 太郎 印
定款の原本証明でよくある質問
最後に、定款の原本証明でよくある質問についてまとめました。
原本証明は誰が行う?
定款の原本証明をするのは、株式会社は代表取締役、合同会社は代表社員、一般社団法人は代表理事と、原則、会社の代表者が行います。
いつの日付を記載するのが良い?
原本証明の日付は、行政機関や金融機関への定款提出日ではなく、原本証明をした日付を記入します。
定款の原本を紛失したら?
原始定款を紛失した場合は、公証役場に依頼することで再発行できます。ただし、保管期限の20年を過ぎていると、再発行が難しくなることがあります。
実は、原始定款よりも現行定款の紛失の方が厄介です。なぜなら、最新の現行定款を必ずしも法務局に提出していないこともあり得るからです。
最新版を提出している場合は、法務局に閲覧申請を出し、それを元に再作成します。万が一、法務局に提出していない場合は、株主総会の議事録を元に再作成を行いましょう。
なお、司法書士や行政書士などに定款作成を依頼していた場合は、関係書類を保管していることがあります。一度問い合わせをしてみましょう。
電子定款で会社を設立した場合は?
電子定款で会社設立を行った場合は、紙の場合と少し異なります。電子定款では、公証役場に同一情報の提供の請求手続きを行います。同一情報とは、紙の定款謄本に該当し、PDFデータをプリントアウトしたものを交付するのが一般的です。一通あたり700円で、定款ページ数につき20円が加算されていきます。
まとめ
定款の原本証明と聞くと、複雑な手続きが必要と感じますが、先に述べたように、定款をコピーして、最終ページに原本証明の文言や捺印するだけ。なお、原本証明は特に体裁が定められていませんが、どうしても作成に不安な場合は専門家に問い合わせしてみましょう。
定款の原本証明に関して、不明点や疑問点があるという方は、当事務所がサポートいたします。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。