社名(商号)変更に必要な手続きは?必要書類や提出期限についても
商号とは、会社の名称のことです。商号は会社特定のための最も重要な情報であり、変更があった場合には、すみやかに変更登記をしなければなりません。本記事では、社名(商号)変更で発生する手続きと、必要書類について解説します。
社名(商号)とは?
商号とは、会社の名称のことです。商号は会社特定のための最も重要な情報であり、変更があった場合には、すみやかに変更登記をしなければなりません。会社の種類により、株式会社、合名会社、合資会社または合同会社の名称を入れます。株式会社の場合「K.K.」や「Co.Ltd」の略称を使用できませんので、注意してください。なお、株式会社などの名称の位置に関しては特に定めはありません。
商号を決める際には、他の会社と誤認されるような名称や商号を用いてはならないとされています。事前に、類似商号調査をしておくことをおすすめします。
社名(商号)変更手続きの流れ
商号の変更をする場合、定款の変更をする必要があります。定款変更は特別決議事項であるため、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権のうち3分の2以上の賛成を得なければ、商号を変更することはできません。
新しい社名(商号)を決める
商号変更を検討している場合、まずはどのような商号に変更するかを決めましょう。商号は原則自由に決められますが、次のような会社法上の制限事項があります。
- 同一所在地に同一商号の会社を置くこと
- 不正目的で、他の会社と誤認されるような商号を使用すること
また、使用できる文字は以下の通りです。
- 日本語
- ローマ字
- アラビア数字
- アンパサンド(&)、アポストロフィー( ‘ )、コンマ(,)、ハイフン(–)、ピリオドおよび中点
必要書類を揃える
商号変更のためには、商号変更登記を行わなければなりません。そのために必要な書類は次の通りです。
登記申請書
原則として本店の管轄法務局へ変更登記申請を行います。
株主総会議事録
商号変更には定款変更が必須であり、そのためには株主総会の特別決議が必要です。
株主リスト
虚偽の株主総会議事録を貼付して事実に反する登記がされるのを防止するために必要な書類となります。
印鑑届出書
代表者印の改印届書の提出の際に、発行から3ヶ月以内の代表者個人の印鑑証明書が必要になります。
変更登記の申請を行う
変更日として定めた日から本店は2週間以内、支店は3週間以内に商号の変更を行わなければなりません。期限を過ぎると、登記懈怠(とうきけたい)として、代表者個人に対し、100万円以下の過料が課せられることがあります。商号変更登記にあたっては、下記の書類を準備しておきましょう。
- 代表取締役個人の実印
- 従来の会社実印
- 新しい会社実印
- 代表取締役の個人印鑑証明書
- 収入印紙(3万円)
法務局や税務署等に届出を行う
商号を変更した場合には、変更があった日から2週間以内に商号変更登記を行わなければなりません。商号は、会社を特定するために最も大切な情報です。登記が義務になっているのは、商号が変更され登記名と異なった状態になると取引先が混乱し、業務に支障が生じることがあるからです。また、会社には法人税を始めとする各種税が課税されます。これらの情報を正しく確定するためにも、商号を変更した場合は税務署にも届け出るよう、法人税法などで規定されています。
法務局
まず済ましておかなければならないのは、商号(社名)の変更登記です。これは、他の手続きで登記簿謄本が必要になるためです。「商号変更の効力が発生する日から2週間以内」に申請しましょう。
税務署
法務局で商号変更登記を完了したら、次の書類を速やかに税務署へ届け出ましょう。
- 異動届出書(法人税)
- 消費税異動届書(消費税)
また、異動事項の内容確認のために定款の写しが求められることもあります。
都道府県税事務所
都道府県税事務所へ届けるのは、次の書類です。
- 法人異動届書
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
東京23区内は設立から15日以内、その他の地域では設立日から1ヶ月以内に行います。
詳しくは、管轄の都道府県事務所にお問合せください。
市区町村
各市町村へ届けるのは、次の書類です。
- 法人異動届出書
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
提出期限は設立日から1ヶ月以内ですが、市町村によって異なることもあります。詳細は各市町村の法人住民税課にお問い合わせください。
年金事務所
年金事務所に届ける書類は、下記の通りです。
- 適用事業所名称/所在地変更(訂正届)
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
商号の変更後、これらの書類を5日以内に年金事務所へ提出してください。
労働基準監督署
商号(社名)を変更した場合は、変更日の翌日から10日以内に次の書類を提出してください。
- 労働保険名称、所在地等変更届
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
これらの書類は公共職業安定所へ届出をする前に提出しましょう。
公共職業安定所
商号(社名)変更後かつ労働基準監督署への手続きの完了後10日以内に、次の書類を提出してください。
- 労働保険名称、所在地等変更届の控え
- 雇用保険事業主事業所各種変更届
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
名義変更の実施
商号変更の際には、各種名義の変更も必要になります。代表的なものは、金融機関、公共料金の支払いなどでしょう。また、商号の変更は取引先などにも伝えて、変更前後で齟齬が生じないようにすることが一般的です。
金融機関
商号が変わると、各金融機関の口座名義も変更しなければなりません。必要な書類は金融機関によって異なりますが、代表的なものは次のようなものです。
- キャッシュカード
- 通帳
- 口座開設時の届出印
- 法人印鑑証明書
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 本人確認書類(運転免許証など)
これらは、あくまでも一例にすぎません。口座の種類によって準備すべき書類が異なることもあるため、詳細は使用している金融機関に問い合わせしてみましょう。
公共料金
各種公共料金も、商号の変更に伴い名義を変更しなければなりません。電気・ガス・水道・電話などはその代表例です。公共料金を現金で支払っている場合には、新しい会社名義で請求書を発行してもらうために、お客さまセンターなどに連絡しましょう。
支払い方法が口座引き落としなら、口座情報の変更が必要です。クレジットカード払いなら、カード番号が変わる場合がありますので、カード会社に連絡してカード番号とカード名義の変更などを届け出ます。
取引先企業への通知
たとえ法律上は商号変更後であっても、過去に締結した契約書の再締結は不要です。ただし商慣習上においては、契約書の再締結や覚書を締結することもあります。これは、古い商号が契約書に残っていて商号変更後に締結した契約との区別がつきにくい、商号変更そのものが契約内容に影響するケースなどによるものです。
改印手続きを行う
商号変更と同時に行うことが多いのが、代表者印の改印です。代表者印には会社名が含まれていることも多く、新旧の商号を統一して先方からの誤認や不要な疑いを避けるのが一般的です。
改印手続きは、本店所在地の管轄の法務局に改印届書を提出して行います。このとき、発行から3ヶ月以内の代表者個人の印鑑証明書もあわせて提出します。
代表者の改印届書は商号変更の登記申請の際に行うと、一度で手続きが済みますが、新しい代表者印が間に合わなければ、後で手続きすることも可能です。
まとめ
商号変更は、非常に煩雑な手続きが多いです。また、期限があるため、商号変更の手続きは速やかに済ませましょう。各種役所への手続きは、登記簿謄本(登記事項証明書)の原本やコピーの提出を求められるため、事前に変更登記を行い、必ず登記簿謄本(登記事項証明書)を準備してから、それぞれの手続きを進めることが得策です。