早期経営改善計画のメリットとは?手続きの流れや対象事業者について
新型コロナウイルスの感染拡大や原油価格の高騰、ウクライナ情勢などの影響により、経営上大きなダメージを受けている中小企業や個人事業者は、珍しくありません。それらの事業者が廃業や倒産に追い込まれる前に活用できる制度が、「早期経営改善計画」です。本記事では早期経営改善計画の概要や申し込み手順について解説します。
早期経営改善計画とは?
早期経営改善計画とは、2017年度から始まった中小企業庁管轄の事業で、経営の見直しを図りたいと考える中小企業等が専門家による認定支援機関の支援を受ける際に、かかる費用の2/3が補助される制度です。通称「プレ405事業」とも。新型コロナウイルス感染拡大により、2021年からは、ポストコロナ持続的発展計画事業(ポスコロ事業)という名称も併記されるようになりました。後述する経営改善計画策定支援事業(405事業)と比較すると利用要件が緩やかなことから、経営状況悪化の初期段階で利用しやすいのが特徴です。
早期経営改善計画と経営改善計画策定支援事業の違い
早期経営改善計画に似た制度が、経営改善計画策定支援事業です。通称405事業とも呼ばれていますが、下記のような違いがあります。
1.補助事業規模
早期経営改善計画
- 最大37.5万円
- 補助割合:3分の2(上限総額25万円)
405事業
- 企業規模・借り入れ金額に応じて、計画策定支援費用の総額が最大450万円補助
- 補助割合:3分の2(上限総額310万円)
2.金融機関との関係
早期経営改善計画
- 企業と認定支援機関の連名による署名申請。金融機関には計画策定の事前報告を行う
- 金融支援は求められない
- モニタリングは年2回程度を想定
405事業
- 金融機関、企業、認定支援機関の三者連名による署名申請
- 何らかの金融支援を受けていることが条件
- 融資取引を行う金融機関の全てから計画に対する同意書が必要
- 策定後3年間のモニタリング期間あり。最低年1回事業進捗の報告義務あり
3.メリット・デメリット
早期経営改善計画
- 金融支援が不要のため、計画策定のハードルが下がる
- 比較的低予算で専門家の支援を期待できる
- 短時間で策定しやすい
- 金融支援がないため、策定メリットが把握しにくい
405事業
- 金融支援がセットになっているため、資金面での不安低減につなげやすい
- 計画を作り込む必要があり、時間と費用がかかる
- 計画に拘束され、弾力的な事業実施が難しい恐れがある
早期経営改善計画の対象となる事業者は?
早期経営改善計画は、個人事業主や小規模事業者、中小企業の利用を想定した支援制度です。早期に経営の見直しを図れば事業の立て直しや改善が期待できる場合は、こちらの制度の利用がおすすめです。
ただし、次のようなケースは利用対象外となる可能性があるため、該当する、または不明な場合は、経営改善支援センターに問い合わせてみましょう。
- 条件変更などの金融支援が必要な状況である
- 過去に経営改善計画策定支援事業や早期経営改善計画を利用したことがある
また、405事業と同じく、以下の法人形態は対象外になります。
- 特定非営利活動法人
- 社会福祉法人
- 一般社団/財団法人
- 公益社団/財団法人
- 農業協同組合
- 農事組合法人
- 生活協同組合
- 有限責任事業組合
- 学校法人
早期経営改善計画のメリット
早期経営改善計画を利用すると、次のようなメリットがあります。
自社の経営課題を把握できる
自社の経営課題の把握において、ビジネスモデル俯瞰図や資金実績・計画表の作成は欠かせません。
まず、ビジネスモデル俯瞰図とは、主な顧客や仕入先を把握するための資料で、商売の流れを可視化したものです。また、早期経営改善計画ではデューデリジェンスの策定までは求められないものの、本質的には資金繰り計画の見直しが求められます。
早期に自社の経営課題を把握することで、余力があるうちに、経営改善に向けた現実的なアクションプランの立案が可能になります。
専門家のフォローアップを受けられる
同制度を利用した場合、経営計画策定から1年後の決算期に専門家によるフォローアップを受けることができます。
さらに2022年4月の制度改正により、任意で期中のフォローアップも受けることが可能となりました。なお、期中のフォローアップのタイミングとしては、半期ごとの中間決算期などが想定されています。
事業継続に向けたアクションプランを立てられる
事業継続につながる有効なアクションプランの立案が可能になります。これは、ビジネスモデル俯瞰図や資金実績・計画表の見直し、さらに専門家によるアドバイスを受けて明確になった課題に対するアクションプランを、具体的に落とし込むためです。
アクションプランの改善効果は数値化され、損益計画にも反映されます。それに加えて「いつ」「誰が」アクションプランを実行するかも明確になります。
早期経営改善計画を利用する流れ
ここでは、早期経営改善計画の利用の流れについて解説します。
金融機関に相談をする
まず、早期経営改善計画を利用する前に、メインバンクに相談します。これは経営改善支援センターに利用申請する際に、金融機関が発行する「事前相談書」が必要になるためです。事前相談書とは、金融機関が申請者から早期経営改善計画の策定における相談を受けた旨を記した書面のことをいいます。
金融機関から事前相談書を受け取ったら、認定支援機関と連絡を取り合いながら、申請準備を進めます。どこから着手したら良いかわからなければ、まずは融資や借入などで取引実績のある金融機関に相談しましょう。
認定支援機関を検索する
認定支援機関は、国が認定した税理士や中小企業診断士などで構成されています。早期経営改善計画を利用する際には、認定支援機関との連名で手続きを進めることが原則となっています。
なお、認定支援機関は自身で選定する必要があります。周りに税理士や中小企業診断士などがいない場合は、全国の認定支援機関を検索できる「認定経営革新等支援機関検索システム」を利用しましょう。
経営改善支援センターに利用申請をする
認定支援機関が決まったら、経営改善支援センターに対して、認定支援機関と連名で「経営改善支援センター事業利用申請書」と「事前相談書」を提出します。
また、金融機関自体が認定支援機関として認定されている場合は、金融機関が連名で申請することもできます。
早期経営改善計画の策定・提出
申請内容が受理されたら、認定支援機関と共に早期経営改善計画書の策定を行います。このときに、ビジネスモデル俯瞰図の作成や資金繰りの見直し、その他の経営課題の洗い出しを行い、具体的かつ実現可能なプランニングをするのがポイントです。
また、金融機関にも早期経営改善計画書を提出しましょう。これは、経営改善支援センターに支払い申請をする際に、金融機関が発行する「受取書」が必要になるためです。
支払いの申請を行う
早期経営改善計画が完成し、金融機関の「受取書」を受理したら、認定支援機関と連名で「経営改善支援センター事業費用支払申請書(早期経営改善計画)」及び「受取書」を提出します。
早期経営改善計画と支払申請書の内容が承認されたら、専門家に支払った計画策定費用のうち3分の2が経営改善支援センターから支払われます。なお、金額の上限は15万円となります。
モニタリング報告書の提出
早期経営改善計画に連署した認定支援機関は、計画策定の1年後の決算期に、進捗を確認するモニタリングを実施します。また、制度の改定により、期中のモニタリングも事業者の任意で実施できるようになりました。
期中・決算期いずれも、モニタリングを請け負った専門家が、経営改善支援センターに対してモニタリング費用支払申請書(早期経営改善計画)及びモニタリング報告書を提出します。モニタリング費用の上限は、期中・決算期いずれも5万円です。
まとめ
早期経営改善計画を活用すれば、専門家のアドバイスやフォローアップの元、自社の経営課題の把握や、事業継続に向けたアクションプランを立てることができます。
しかしながら、制度利用における手続きは複雑で、利用申請のハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。早期経営改善計画の進め方がわからないということであれば、当事務所がサポートいたします。
ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまで、お気軽にご連絡ください。