下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは|禁止事項や対象取引についてわかりやすく解説
下請法は、親事業者が地位を利用して行われる、下請の事業者に対する不当行為を取り締まる法律です。事業者や個人事業主に非がない事柄について、発注側が不当な代金の減額または支払い遅延、不当な返品の値下げを行うことを禁止しており、仮に事業者間で合意されていたとしても、下請法違反として取り締まられることになります。
本記事では下請法によって定められている親事業者の果たすべき責任と禁止事項をわかりやすく解説します。
下請法(下請代金支払遅延等防止法)の定義とは?
下請法とは、大きな資本金(一般的には1,000万円以上)をもつ親事業者が、小さな資本金の事業者や個人事業主(下請事業者)に対して、不当な代金の値下げや支払いの遅延を行うことを禁止する法律です。下請法という呼称が浸透していますが、正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」となります。
親事業者が果たすべき義務
下請法では、下請事業者に仕事を発注する際に果たすべき4つの義務が存在します。
書面の交付義務
業務の発注内容を明記した書面を渡す義務(3条書面)があります。業務を発注する際は、法律で定められた記載事項を明記した書面の交付と保存をしなければ、最高で50万円の罰金が科されます。
支払期日を定める義務
下請事業者と合意した内容で代金を支払う日付を定める義務があります。期日については、発注した商品やサービスを受領した日から60日以内と定められており、支払いを遅らせることはできません。
書類の作成・保存義務
取引を記録した書類(5条書類)を作成し、保存する義務があります。書類には代金や取引内容を記録し、2年間保存してください。保存した書類は公正取引委員会の調査において活用されます。
遅延利息の支払義務
合意した支払期日までに代金を支払わなかった場合、遅延損害金(遅延利息)を支払う義務が生じます。遅延損害金は商品やサービスを受領した日から60日が経過した際に発生し、代金が支払われるまで年率14.6%の利息が発生します。
下請法(下請代金支払遅延等防止法)の対象取引・適用条件
下請法では資本金によって親事業者と下請事業者を区分しています。取引内容によって資本金区分が異なるため注意してください。また、罰則の対象になる取引は、委託される業務内容で条件が大きく異なります。
製造委託
物品を製造している事業者が、製品の規格を指定し、下請事業者に製造を委託する行為を指します。物品は食料品、衣料品、電化製品などの動産を指し、建物や家屋などの不動産は含まれません。
修理委託
物品を修理する事業者が、下請事業者に修理を委託する行為を指します。また、業務で使用する物品の修理を下請事業者に委託する場合も修理委託に該当します。
情報成果物作成委託
ソフトウェアやデザインといった情報成果物を作る事業者が、下請事業者に作成業務を委託する行為を指します。情報成果物の範囲は多岐に渡り、プログラムはもちろん、音声や文字などで構成された成果物、物品の設計や付属品に関する成果物も含まれます。
役務提供委託
運送、清掃、警備といったサービスを提供する事業者が、請け負ったサービスを下請事業者に委託する行為を指します。サービスの範囲は多岐に渡りますが、建設業者が請け負う工事については含まれません。
下請法で定められている11の禁止事項
下請取引の公正化と下請事業者の利益保護のため、11の禁止事項が設けられています。
1.受領拒否の禁止
下請事業者へ業務委託した商品や物品の受け取りを拒否することは禁止されています。なお、親事業者の管理する倉庫で、商品の保管が難しい状況でも物品の受け取りを拒むことはできません。
2.下請代金の支払遅延の禁止
合意した期日までに代金を支払う義務があります。支払い期限の延期はできません。下請事業者は資本金が少なく、親事業者に比べると資金繰りが悪化するケースも多いため、これを防ぐことを目的としています。
3.下請代金の減額の禁止
発注時に合意した下請代金を減額できません。時間の経過とともに納品物が不要になった場合でも、代金の減額は禁じられています。
4.返品の禁止
下請の事業者に非がある場合を除いて、親事業者の委託を受けて作成した製品の返品はできません。下請業者は返品された場合に、自社販売が難しいため、これによって生じる不利益を防ぐ狙いがあります。
5.買いたたきの禁止(値引き)
業務を発注する際の代金を不当な理由で低く設定することは禁止されています。また、製造委託において、製品の原材料価格が高騰している際に、下請事業者の価格交渉に応じなかった場合も買いたたきに該当する恐れがあります。
6.購入・利用強制の禁止
商品やサービスの購入の強制はできません。仮に第三者が提供する商品やサービスであった場合でも罰則の対象になります。
7.報復措置の禁止
公正取引委員会や中小企業庁に下請法違反を報告したことを理由として、取引数量の削減、取引停止などの報告措置を取ることは禁止行為に該当します。
8.有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
合意した支払いの日付よりも前に原材料を請求できません。有償支給原材料は、下請事業者が発注側から購入する原材料のことです。親事業者が支払い期日よりも前に原材料の支払いを請求すると、下請の事業者の資金繰りが難しくなってしまうためです。
9.割引困難な手形の交付の禁止
一般の金融機関では割引が難しい手形で代金を支払うことは禁じられています。手形を交付する際は支払期日までに現金払いと同等の効果を得られる方法で支払いましょう。
10.不当な経済上の利益の提供要請の禁止
販売協力金といった名目で金銭を要求することは禁止されています。また、下請事業者で働く従業員を親事業者に提供するといった行為も認められません。
11.不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(発注取り消し)
下請事業者に非がないのにもかかわらず、契約合意後に内容や納期の変更をすることはできません。また、下請事業者から委託した製品を受け取ったにも関わらず、契約で指定のない作業を追加することも罰則の対象に含まれます。
まとめ
下請法は、取引において弱い立場になりがちな下請事業者を守るための法律です。下請法の対象となる事業者は、違反にならないための対策はもちろん、指導を受けた際の対応も理解する必要があります。法律に抵触する行為や罰則には専門的な知識が必要な事例も多いため、弁護士や税理士・会計士などの専門家からアドバイスをもらうことをおすすめします。