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資本準備金とは?資本剰余金や利益準備金との違いや、増額・取り崩しの方法について

会社を設立する際に、法人形態を問わずに必要不可欠なのが資本金です。一方、資本準備金は、非常事態に備えた「予備費」の色合いが強いのが特徴といえます。

資本準備金の意味とは?

資本準備金は、経営悪化などに備えて積み立てておく法定準備金のことを指します。積み立てられる準備金には資本準備金の他に利益準備金があり、会社法上で業績悪化時にそれらを取り崩し資本金に充当することが認められています。

登記簿謄本への記載義務はありませんが、会社設立時に払い込まれる金額のうち、資本金として計上しなかった分については資本準備金にすることが定められています。

資本準備金と資本金の違い

資本準備金の取り崩しについては、株主総会の普通決議のみで資本金への振替が認められており、増資や減資と比べると手続きが簡便化されているのが特徴です。

一方、資本金は会社設立などに際して会社運営の元手となる資金です。2006年から施行された新会社法では、資本金額1円から株式会社が設立できるようになりました。
資本金については登記簿謄本への記載義務があります。また、「資本不変の原則」に基づき、減資をする場合には株主総会の特別決議と債権者保護手続きを経なければなりません

関連記事:資本金を減資する手続きの方法とは?メリットやデメリットについて

資本準備金と資本剰余金の違い

資本剰余金は、資本取引の結果として生じる剰余金の一種です。計算式は以下のとおりです。

資本剰余金=資本取引上の剰余金-利益剰余金

また、資本剰余金は株主配当の原資となる性質をもっています。一方、資本金や資本準備金は、原則として株主配当に充てることは認められていません。

資本準備金と利益準備金・利益剰余金の違い

資本準備金および利益準備金は会社法445条で定められた法定準備金であり、その原資は会社設立時などに振り込まれる株主の出資金です。

利益準備金は過剰な利益配当による企業の財政基盤の揺らぎや、債権者の利益逸失を防ぐことを目的とした準備金です。その原資は企業の経済活動から発生する利益です。

また、利益剰余金は企業の利益のうち株主へ配当されずに内部留保されている資金を指します。この分が大きいほど財源に余力があるとみなされ、企業規模を測るバロメーターとされています。

資本準備金を用意するメリット

資本準備金の用意は法定義務ではありませんが、欠損補填がしやすくなる、スムーズに増資が可能になるなど、いくつかのメリットがあります。

欠損填補がしやすい

資本金の変更には、登記変更や株主総会の決議などの手間がかかります。一方、あらかじめ資本準備金を積み立てていると、資本金の減資や特別な手続きをせずに、資本準備金の中から赤字補填に回すことが可能となります。

スムーズに増資できる

会社の増資方法には、株式発行して出資を募る「公募増資・株主割当増資・第三者割当増資」と、会社の資本構成を変えることで増資する「無償増資」の2つの方法があります。

このうち前者は、必ずしも期待どおりの金額が払い込まれるとは限りません。

一方「無償増資」では、積み立てておいた資本準備金などの組み入れになるため、確実な増資が見込めます。

関連記事:資本金の増資とは|株式会社、合同会社別で手続きや必要書類を徹底解説

税制の優遇措置を受けられる

会社設立時の資本額が1,000万円未満であれば、設立後2年間は消費税の納税が免除されます。また、資本金が1億円以下で、かつ年間所得が800万円以下の場合は、法人税の軽減のほか外形標準課税の対象外となります。

ただし、資本金額は金融機関など対外的な信用のバロメーターという側面ももつため、税理士や会計士などの専門家と相談しながらバランスを勘案することがベターです。

資本準備金を増減するには?

資本準備金を増減するには、必ず株主総会の決議を経なければなりません。また、減資においては、原則として債権者保護手続きも行います。

資本準備金を増額する方法

資本準備金の増額は、「資本金からの組み入れ」と「資本剰余金からの組み入れ」の2種類があります。

資本金から組み入れする場合、株主総会における特別決議が求められ、過半数以上の出席者かつ3分の2以上の賛成が必要です。また、資本剰余金からの組み入れでは過半数以上の出席かつ2分の1以上の賛成が必要とされています。

資本準備金を減少・取り崩しする方法

資本準備金を減少させるには、株主総会の普通決議および債権者保護手続きが求められます。株主総会の普通決議では、株主の過半数の出席かつ2分の1以上の賛成を得なければなりません。また、債権者保護手続きについては、官報での公告に加え、個別に債権者に対して通知を行います。なお、資本準備金をすべて資本金に組み入れる場合には債権者に対する不利益は生じないため、債権者保護の手続きは不要となります。

資本準備金でよくある質問

資本準備金でよくある質問についてまとめました。

資本準備金の使い道は?

資本準備金は、あくまで赤字など会社の非常時や将来に備えて積み立てておく資金です。
消費税や法人税の課税の際には資本金を基準とするため、節税対策として資本準備金の比率を多くするケースも見受けられます。

資本準備金の上限額はいくら?

会社法第445条第2項および3項の条文では、株主から資本金として払込みもしくは給付を受けた額のうち、2分の1を上限として資本金としないことが認められています。仮に資本金を1,000万円として登記した場合は、500万円が資本準備金の上限となります。

資本準備金を配当に回すことはできる?

資本準備金は株主からの出資に基づく資金であるため、配当に回す場合は資本準備金の減少に係る株主総会の特別決議および債権者保護手続きを完了したうえで、剰余金への振り替え手続きを行います。

合同会社でも資本準備金はある?

合同会社では出資者と経営者が同一であるのが基本です。そのため出資額を資本金としていくら計上するかは、業務執行社員の裁量に委ねられています。株式会社と異なり、そもそも資本準備金の概念自体が存在しないといえるでしょう。

資本準備金を仕訳するときの勘定科目は?

資本準備金の仕訳が必要になる場面は、会社設立時の払込みと増資に伴う資本金への組み入れが考えられます。仮に1,000万円の払い込みが行われてそのうち資本準備金が500万円とすると、次のような仕訳になります。

借方

貸方

預金:10,000,000円

資本金5,000,000円
資本準備金5,000,000円

また、増資に伴い資本準備金のうち300万円を資本金に組み入れたときの仕訳は、以下のとおりです。

借方

貸方

資本準備金:3,000,000円

資本金3,000,000円

まとめ

資本金と資本準備金のバランスや、資本準備金を活用した節税については専門的な知識が求められます。資本準備金に関することで不明点がある方は、ぜひ税理士や会計士などの専門家にご相談ください。

当事務所では、法人設立や融資相談のほか、全般的な税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。

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