専従者給与の上限はいくらまで?適用要件や金額の変更方法についても
事業規模が大きくなってきた事業者に有効な方法が「専従者給与」。
専従者(家族)へ支払う給与を全額経費として計上できるため、節税効果が期待できます。しかし、専従者給与で控除するには、一定の条件を満たす必要があるほか、諸手続きを行わなければいけません。本記事では、専従者給与とはどのようなものか、また白色申告の事業専従者控除との違いについても解説します。
専従者給与とは?
専従者給与とは、事業に携わっている配偶者や15歳以上の親族に対して支払う給与を、所得から控除できる制度のことを指します。専従者とは、青色事業者が行う事業に従事するものを指し、主に家計をともにする配偶者または親族が対象となります。専従者給与は全額経費として計上できるため、所得が少なくなり、節税につながります。
白色申告の事業専従者控除との違い
青色申告の個人事業主の場合は、専従者給与を使って全額経費にすることができますが、白色申告の個人事業主は給与を経費扱いにできません。その代わり、白色申告の場合は「事業専従者控除」に基づき、一定金額を所得から控除できます。
専従者給与の控除金額の決定条件
以下のいずれか低い金額になります。
- 事業専従者が配偶者なら86万円、配偶者以外の親族なら一人あたり50万円
- 控除前の事業所得等の金額÷(専従者の数+1)の金額
専従者給与の要件・適用範囲
専従者給与として認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
(1)青色事業専従者に支払われた給与であること。
イ:青色申告者と生計をともにする配偶者その他の親族であること。
ロ:その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ:その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。(2)「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出済みであること。
(3)届出書の記載方法で支払われて、かつ、その記載金額の範囲内で給与を支払っていること。
(4)青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。このうち、補足すべき記述は、「青色申告者と生計をともにする」です。実は、同居していない配偶者や親族でも問題ありません。重要なのは、家計をともにしているかという点です。
専従者給与のメリット
専従者給与制度を活用するメリットは、節税効果が期待できることです。支払う給与を全額経費として計上できるため、結果として所得が少なくなり、節税につながります。ただし、専従者は配偶者控除や扶養控除の対象から外れてしまい、専従者自身が支払う税金が多くなる可能性があります。全体のバランスをみて、専従者に支払う給与を決めると良いでしょう。
専従者給与の注意点
専従者給与を運用する上での注意点は、大きく以下の2つです。
「専ら従事する」の基準
非常にあいまいな表現ですが、例えば、配偶者が会社に勤めながら副業として仕事にあたっていたり、アルバイトをしながらスキマ時間で手伝っていたりする大学生(子供)の場合は、専従者とみなされない可能性が高いです。
「労務の対価として相当であると認められる」金額
これは、一般の良識範囲内と考えておけば相違ないです。例えば、事務作業を任せているのに、月に80万円を支払っていたら、明らかに業務量と見合わないと判断されて税務調査の対象になる恐れがあります。正当な理由があれば問題ないですが、過大と見なされた場合は、否認される可能性が非常に高いです。
専従者給与でよくあるQ&A
ここでは、専従者給与でよくある質問についてまとめてみました。
専従者給与はいくらまで?上限は?
特に上限は定められていません。しかし、前述したように明らかに業務に見合っていない場合は経費として認められないことがあります。専門性を求められる業務を専従者に任せるなどの事情でない限りは、8〜15万円程度にとどめておくのが得策です。
なお、専従者へ給与を支払う際には源泉徴収義務が発生します。しかし、月88,000円以下であれば、徴収の義務がなくなります。会計処理が煩雑であるということであれば、月に88,000円以下で設定しておくのも良いでしょう。
専従者給与の人数は何人までOK?
事業専従者の人数に制限はありません。条件を満たしていて働いている実態があれば、何人でも増やすことは可能です。
赤字だと、専従者給与は認められない?
事業所得が赤字であっても、給与額が適正であれば全額経費として認められます。
専従者給与の勘定科目について
「専従者給与」という勘定科目で経費計上を行いましょう。白色申告の場合は、専従者への給与を経費とできないため、事業主貸として処理する必要があります。
専従者給与に退職金は含まれる?
専従者給与では経費計上できるのはあくまで「給与」です。退職金の支給は算入できないので注意しましょう。
専従者給与の手続き方法と、提出書類の書き方
専従者給与控除を受けるには、専従者へ給与を支払う年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を所管の税務署へ提出する必要があります。新しく専従者が増えた、事業を始めたという場合は、その時期から2ヶ月以内に提出するようにしましょう。
- 専従者の氏名・・・専従者とする配偶者や親族の氏名
- 続柄・・・事業主との続柄
- 年齢/経験年数・・・「経験年数」には事業に従事している期間を記入
- 仕事の内容・従事の程度・・・業務内容と職務、就業時間や就業期間を記入
- 格等・・・保有資格を記入
- 給料・・・給与額と支給日を記入
- 賞与・・・賞与がある場合は、給与と同様に金額と支給日を記入
- 昇給の基準・・・昇給の基準を記入
「青色事業専従者給与に関する届出書」の書き方については、国税庁ホームページでも案内があります。詳しく知りたい方は、下記を参照ください。
参照:[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続
専従者給与の金額を変更するには?
手続き時に記入した金額を上回らなければ、毎月同額で支給する必要はありません。業績悪化に伴い減額をして、その後戻すといった処置も可能です。ただし、手続き時に記入した金額を上回る給与を支給する際は、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」に、新しい給与の金額と変更理由を記載して、提出する必要があります。
まとめ
専従者給与は非常に便利な制度ですが、要件を満たさなければ経費として計上できません。また、配偶者控除や所得控除との併用ができないため、給与金額においては慎重に検討する必要があるでしょう。
専従者給与の仕組みがわからない、手続き方法や進め方がわからないということであれば、当事務所がサポートいたします。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。