過少申告加算税とは?計算方法や軽減措置が適用されるケースについて
納税に不備があったときに課される加算税の一つ「過少申告加算税」。用語は知っているものの、詳しいイメージがつかめない人も少なくないのではないでしょうか。本記事では、過少申告加算税の定義や計算方法について解説します。
過少申告加算税とは?
過少申告加算税は、所得税や法人税の申告において本来納付すべき税額が不足している場合に課される加算税です。あくまでも納税者による計算ミスや見解の違いから、納税額が本来の税額よりも過少となっていることがポイントです。
計算ミスや計上漏れに気付き、速やかに修正申告を行った場合には過少申告加算税の課税を免れることもあります。仮に故意の隠蔽や虚偽が発覚した場合には、よりペナルティの大きい重加算税が課されます。
過少申告加算税と無申告加算税の違い
過少申告加算税と無申告加算税は、双方とも納税者が適切に税額を申告・納付しなかった場合に課されるものですが、無申告加算税は申告期限を過ぎても申告書を提出しなかった場合に課される加算税です。
確定申告の期限は、原則として毎年2月16日から3月15日迄です。この期限を過ぎて申告した場合は、納付すべき税額に応じて15%から20%の加算税がかかります。ただし、税務署からの指摘を受ける前に自主的に期限後申告を行った場合は加算税は5%に減額されます。
過少申告加算税と重加算税の違い
重加算税は、納税者が故意に所得や売上を隠匿したり、虚偽の記載を行ったりするなど意図的に税額を少なく見せようとしたときに適用される加算税です。
これは、過少申告よりも悪質な申告漏れや偽装工作、脱税行為が判明した際に適用され、35%と過少申告加算税よりもはるかに高い税率が設定されています。
過少申告加算税の計算方法
過少申告加算税は、申告した税額が本来納めるべき税額よりも少ない場合、その差額に対し10%を掛けて計算します(増差税額)。ただし、過少申告による税額が50万円を超過する部分については15%の税率が適用されます。
例えば、当初申告した納税額が200万円で修正後の課税額が500万円だった場合、増差税額は300万円です。このうち、最初に納税した200万円に対する過少申告加算税は10%を掛けて20万円となり、200万円を超えた100万円については15%を掛けて15万円となります。したがって、最終的に納付すべき金額は以下のようになります。
増差税額300万円+過少申告加算税(20万円+15万円=35万円)+延滞税 |
過少申告加算税の他に発生する延滞税について
延滞税とは、法定の納付期限までに国税を支払わないと発生する税金です。期限内に納付していても、修正申告や更正によって法定納付期限後に税額不足が生じた場合は、課税対象になることがあります。
過少申告加算税が課されるときには、同時に延滞税も課されるのが通例です。ただし、延滞税は罰金ではなくあくまで納付の遅延に対する課税であり、過少申告加算税とは性質が異なります。なお、積極的に納税者が税務調査に協力したケースなどでは、加算税の一部が免除される措置を受けられることもあります。
過少申告加算税がかからない場合・ケース
確定申告で不備が見つかったとしても、過少申告加算税が適用されないケースもあります。
過少申告加算税が5,000円未満である
国税通則法 第119条 第4項で「納付すべき無申告加算税が5,000円未満の場合は全額切り捨てる」と規定されているように、加算税額が5,000円未満だと課税が免除されます。ただし、会計理論上は端数計算の処理に過ぎず、加算税そのものは課されていることに注意してください。
更正予知前に自主申告をした
更生予知前の修正申告とは、税務調査を受ける前に自主的に修正申告を行ったことを意味します。この場合、過少申告加算税は課されません。万が一、納税額の不足や過剰還付に気付いた際には、速やかに修正申告を行いましょう。
正当な理由がある
過少申告について、納税者に帰責事由がない客観的な事情が見受けられる場合は、過少申告加算税が適用されません。具体的な事例としては、次のようなものが挙げられます。
- 税務署職員の誤った指導に従った
- 税法の解釈が変更され、それに基づき修正申告が必要となった
- 国税局の職員が編集または監修した解説書の記載に基づいて納税書類を作成・提出した
ただし、正当な理由があることの立証や主張は、納税者自身が行う必要があります。
過少申告加算税でよくあるQ&A
過少申告加算税の軽減措置とは?
国税関係の帳簿を保存する際、電子帳簿での保存を選択すると優良帳簿として認められます。優良な電子帳簿として認定されるのは以下3つです。
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- その他必要な帳簿
過少申告加算税では、通常10%~15%の税率が適用されますが、優良帳簿では本来の規定よりも5%軽減されます。
過少申告加算税の勘定科目はどれに該当する?
過少申告加算税や延滞税は「租税公課」の勘定科目で処理します。ただし、租税公課には損金算入できるものとできないものがあります。
過少申告加算税は損金不算入処理が求められるため、摘要欄に加算税や延滞税について記載しておくと良いでしょう。例えば、税務調査で追徴課税が発生し普通預金から3万円を納付した場合の仕訳は以下のとおりです。
借方 |
貸方 |
||
租税公課 |
30,000円 | 普通預金 | 30,000円 |
過少申告加算税の加重措置とは何か?
税務職員などから「売上に関する調査に必要な帳簿」の提示を求められることがあります。この際、帳簿を提示しなかったり、本来記載すべき事項に関する申告漏れがあったりした場合、過少申告加算税や無申告加算税が加重されてしまいます。加重措置が適用される違反内容とペナルティは以下のとおりです。
違反内容 |
加重措置 |
帳簿等の提示などを行わなかった |
10% |
帳簿への売上金額が、本来記載等をすべき金額の2分の1未満だった |
10% |
帳簿への売上金額が、本来記載等をすべき金額の3分の2未満だった |
5% |
まとめ
過少申告加算税の課税を予防するためには、日頃より正確な帳簿付け及び計算が不可欠です。万が一、不明点がある方は税理士や会計士などの専門家にご相談ください。当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、全般的な税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。