家事按分(かじあんぶん)とは?割合目安はどれくらいが適切なのか?
確定申告の際、自宅で業務をしている個人事業主やフリーランスが頭を悩ますのが事業用の費用と個人の生活でかかる費用の区分ではないでしょうか。
このような場合、事業に使用している割合を算定して部分的に経費にする家事按分という考え方を知っておくと便利です。本記事では家事按分の基準や家事按分ができるもの・できないものについて解説します。
家事按分(かじあんぶん)とは?
個人事業主やフリーランスでは、家賃や電気代、通信費などプライベートと業務を兼ねた費用が発生することがあります。これらの家事関連費について業務利用分だけを経費として計上する方法が「家事按分」です。読み方は「かじあんぶん」。
なお、事業にかかった経費として計上するには合理的な根拠をもとに計算がなされている必要があります。対象となる主な費目としては、地代家賃、水道光熱費、通信費、自動車関連費などが挙げられます。
家事按分(かじあんぶん)ができるもの
家事按分ができる勘定科目には、以下のようなものが挙げられます。具体的な金額につい
ては、それぞれの費用の性質に応じて、かつ合理的な基準の上で算出します。
地代家賃(礼金・共益費など)
マンションなどの賃貸物件を自宅兼事務所を構えている場合、家賃、礼金、共益費を地代家賃として費用計上できます。具体的な方法としては、業務用で使用している面積や、業務に掛けた時間を基準にするのが一般的です。
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8.7(事業用面積)㎡÷60(総床面積)㎡≒0.145(按分比率) 100,000円×0.145≒14,500円(事業用家賃地代) |
持ち家における住宅ローンの元本は費用計上できません。ただし、以下の費用については、家事按分すれば経費計上が可能です。
- 家の減価償却費
- 住宅ローンの金利
- 火災保険料
- 固定資産税
通信費
インターネットの回線使用料やプライベート兼用のスマートフォンの料金などが挙げられます。事業で使った使用時間の割合で計上するのが一般的です。
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水道光熱費
水道光熱費も通信費や地代家賃と同様に、業務に関連する使用分のみを経費として計上します。使用面積や使用時間などを元に算出を行いましょう。
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自動車関連(ガソリン代・駐車場代など)
自動車関連費用には、利用時間・利用日数・走行距離のいずれかで按分するのが一般的です。また、車両本体の購入代金については、按分対象の減価償却費として扱えます。一例として、ガソリン代の走行距離を基準として按分した場合、以下のようになります。
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以下の費用も家事按分することができます。
- 駐車場代
- 自動車保険料
- 自動車税
- 車検費用
- 修繕費
家事按分(かじあんぶん)ができないもの
事業との関連性が極めて低いものや、明らかに私的と思われる支出は家事按分が認められません。
住宅ローン
住宅ローンの元本は業務との関連性が薄いため、家事按分の対象外になります。ただし、金利部分は家事按分の対象となります。
親族が保有する住居の賃料
生活をともにする配偶者や、親族に対して支払う地代家賃も対象に含まれません。例えば、親と同居していて自宅の一室を事務所として使っている場合や、部屋代として使用料を親に渡すケースなどが挙げられます。
慶弔費
血縁関係のある(兄弟や両親など)従業員に対する慶弔費についても、業務遂行上の関連性が証明しづらいため、家事按分の対象外とされています。
もっとも、一律に慶弔費が対象外とされているわけではなく、例えば、血縁関係のない従業員やその家族の場合は福利厚生費、取引先は接待交際費として計上可能です。
事業主や専従者の生命保険料
事業主や専従者の生命保険は、あくまでも個人のものとして考えられています。また、事業主や専従者の国民健康保険料や国民年金保険料も経費扱いにはなりません。
一方、事業に関わる自動車保険料、火災保険料、地震保険料などの各種損害保険料については損金扱いになるため、家事按分の対象費目とされます。
経費対象として認められる家事按分(かじあんぶん)の基準は?
経費対象として認められるには、業務との関連性や遂行上での必要性、個人の生活でかかる費用との区分が明確であることが求められます。
業務との関連性が明示できるか
業務に直接関係していることが重要です。例えば、家族旅行で使った交通費、友人との接待交際費などは業務に直接関係ないものとみなされるため、経費対象に含まれません。
業務を遂行するうえで必要か
その支出がなければ業務遂行ができない、または著しく効率が落ちると判断されるものであることが大切です。これは職種や業種によって大きく異なります。
例えば、ライターやWebデザイナーなどであればパソコンを使用して作業することが主となるため、通信費は業務遂行に不可欠な経費といえます。また、クライアント先に訪問する機会の多い営業職やコンサルティング職であれば、自動車関連費や旅費交通費などが該当します。
金額を明確に区別できるか
業務にかかる金額を具体的に把握し、適正な按分がされていることが求められます。領収書の宛名は、「上様」などの曖昧な名称ではなく個人事業主の屋号、品目名など具体的に記載してもらうようにしましょう。
家事按分(かじあんぶん)でよくあるQ&A
家事按分(かじあんぶん)の割合の目安はどれくらいがベスト?
家事按分で重要なポイントは「合理的に算出されているかどうか」です。一般的には、以下のような基準が用いられています。
項目(一例) |
按分基準 |
家賃 |
延床面積に対し業務で使用している床面積の割合 |
電気代 |
事業用に使用しているコンセントの割合、使用時間の割合 |
車両代 |
事業用に使用しているコンセントの割合、使用時間の割合 |
通信費 |
業務上使用している日数の割合、使用時間の割 |
家事按分(かじあんぶん)で税務調査が入ることは?
家事按分の割合が業務実態に見合っていなかったり、生活に関わる費用を業務経費として過大に計上していたりすると税務調査が入る恐れがあります。税務調査では合理的根拠を示す必要があるため、日頃から以下の書類を保管しておきましょう。
書類名 |
証明項目 |
領収書 |
金額や支払名目、人数 |
建物の図面 |
生活スペースと事業用スペースの床面積 |
運転日報 |
事業目的の走行距離 |
法人でも家事按分(かじあんぶん)はできる?
法人では、家事按分という概念が存在せず、事業目的に関連する支出のみを経費に計上することが基本となります。もっとも、法人が事業主の資産を利用する、もしくはその逆のケースは珍しいものではありません。この場合、賃貸契約を別途結ぶか「役員報酬」として処理し、個人事業分と法人分で経費を二重計上しないように工夫します。
青色申告と白色申告で家事按分(かじあんぶん)の取り扱いは違う?
青色申告と白色申告では家事按分における基準が少し異なります。所得税法上、業務遂行において必要なことが証明できれば家事按分が認められます。ただし、白色申告の場合は「業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうか」を基本としており、青色申告よりも厳しい基準となっています。
家事按分で経費計上する場合は領収書が必要?
家事按分を証明するためには、レシートや領収書など客観的な証拠が揃っていることが望ましいです。また、家賃や通信費のように銀行口座から引き落とされる項目は、引き落とし口座の記帳記録がその役割を果たします。通帳を発行していないネット銀行などの場合は、取引履歴を印刷しておきましょう。
まとめ
家事按分の基準や適用事例は多岐にわたります。万が一、不明点がある方は税理士や会計士などの専門家にご相談ください。
当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、全般的な税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。