川村会計事務所|大阪・堺の税理士事務所

補助金や助成金の勘定科目は何に該当する?会計処理の記入例や方法について

補助金や助成金は、特に立ち上げ初期の中小企業・小規模事業者にとっては、資金繰りや事業成長の面で非常に助かる制度です。しかし、会計処理が煩雑で難しいと感じる経営者も多いのではないでしょうか。そこで、本記事では補助金や助成金における勘定科目の扱いや会計処理の方法について解説します。

補助金とは?

補助金とは、国が特定の目的に沿って、自治体や企業、民間団体、個人などに給付するお金のことを指します。申請者全員が給付されるわけではなく、審査基準に沿って採択の可否が決定します。

受給したら返還は原則不要ですが、補助金の使途についての証明や提出を求められることがあります。

補助金と助成金の違い

補助金と似たものに助成金があります。違いとしては2つあります。

1つが管轄の違いです。補助金は経済産業省や中小企業庁が管轄していますが、助成金は主に厚生労働省が管轄しています。

もう1つが採択率です。補助金は要件を満たしていても、審査に落ちることもありますが、助成金は要件を満たしていれば、ほぼ支給されます。なお、助成金も補助金と同じく返還は原則不要となります。

補助金と協賛金の違い

国や自治体から支給される補助金・助成金に対し、協賛金はイベントなどの際に企業が応援・賛同などの意を表して支払う資金を指します。目的に応じて、勘定科目は以下の3タイプに分類されます。

広告宣伝費

チラシ、ホームページ、会場などに企業名を掲示し、広告・宣伝をすることを目的とした支払い

交際費

特定の取引先と良好な関係を維持することを目的とした支払い

寄付金

事業と関係のない団体への協賛金の支払い

補助金・助成金の会計処理・勘定項目

補助金や助成金は一般的な事業所得とは性質が異なるため、それらとは別に会計処理を行わなければなりません。

補助金・助成金の勘定項目について

補助金・助成金は本業の売上以外の収入として扱われます。そのため、「雑収入」として処理します。例えば、補助金を100万円受け取ったときの仕訳は以下のとおりです。なお、下表は申請から短期間で支給された場合の会計処理です。

借方

貸方

預金:100万円

雑収入:100万円

補助金・助成金の返還時の仕訳

何らかの事由によって補助金や助成金を返還する場合も仕訳が必要となります。返還時にはすでに金銭の移動が発生しているため、借方に「雑収入」、貸方に「預金」と記入し、それぞれに返還する金額を記載してください。

借方

貸方

雑収入:100万円

預金:100万円

補助金・助成金の会計処理で注意すべき点

ここでは、補助金・助成金の会計処理で注意すべき点について解説します。

消費税は課税対象外だが、法人税や所得税は課税対象

補助金や助成金は特定収入扱いとなるため、消費税の対象外となります。ただし、税務上は「益金」扱いとなるため、法人税は課税対象になります。

特に、固定資産の購入などを目的とする「施設補助金」は大きな益金が発生するため、当該年度の税負担が重くなる恐れがあります。これを避けるには、後述する「圧縮記帳」を利用するのが一般的です。

決算をまたぐ場合は会計処理が複雑になる

補助金は、審査を通過してから実際に支払われるまで数ヶ月かかるケースもあります。決算期をまたぐことが予想される際には、補助金交付が決定した時点と、実際に入金された時点の2回に分けて会計処理を行います。例えば、200万円の補助金を申請し、決算期をまたいだ場合の会計処理は下表のようになります。

借方

貸方

未収入金:200万円

雑収入:200万円

預金:200万円

未収入金:200万円

入金に時間がかかる

補助金の申請をしてから入金されるまでに数ヶ月かかることも珍しくありません。また、経費を支払ってから申請を行うため、タイムラグを計算して資金繰りを行う必要があります。場合によってはキャッシュフローを悪化させる恐れもあります。

補助金・助成金における税負担を軽減する「圧縮記帳」について

圧縮記帳とは、本来は課税所得になるはずの利益を将来に繰り延べる制度のことです。

固定資産の購入にあたって補助金を利用したケースを例に挙げます。この時、損金である固定資産の減価償却費の課税所得と、益金である補助金の課税所得が不均衡となり、補助金の効果を生かせないことがあります。

この初年度の税負担を軽減するために、「補助金を受け取った事業年度」の課税額を減らせる仕組みが圧縮記帳です。

圧縮記帳の仕訳方法

圧縮記帳には、「積立金方式」と「直接減額方式」があります。実務上では、2年目以降に減額した取得価額をもとに減価償却する直接減額方式が簡便とされています。

積立金方式

受給した補助金額を「圧縮積立金」として純資産の部に計上し、減価償却の期間にわたって少しずつ圧縮積立金を取り崩して益金に計上する方法です。具体的な仕訳は下表のとおりです。

例:国庫補助金500万円、機械装置1500万円、減価償却期間5年間を想定

<圧縮積立金の積立て>

借方

貸方

摘要

繰越利益剰余金:500万円

圧縮積立金:500万円

積立金計上

<減価償却計算>

借方

貸方

摘要

減価償却費:300万円

機械装置:300万円

償却費計上

※機械装置は取得価額をもとに減価償却するものとする(1,500万円÷5年=300万円)

<積立金取り崩し>

借方

貸方

摘要

圧縮積立金

100万円

圧縮記帳積立取崩益

100万円

積立金の取り崩し

※圧縮限度額は200万円

※減価償却費100万円(=300万円-200万円)は損金として認められない。したがって、圧縮積立金から差額100万円を取り崩す

直接減額方式

直接減額方式は、補助金の対象となる固定資産の取得価額を直接減額する方法です。

具体的な手順は下表のとおりです。なお、国庫補助金や機械装置の購入費用などは上記の積立金方式と同様とします。

<国庫補助金の交付>

借方

貸方

摘要

預金

500万円

国庫補助金収入

500万円

補助金取得

<機械装置の取得>

借方

貸方

摘要

機械装置

1,500万円

預金

1,500万円

補助金取得

<圧縮損の計上>

借方

貸方

摘要

機械圧縮費

500万円

機械装置

500万円

圧縮損の計上

※圧縮限度額まで損金経理したものとする

<減価償却計算>

借方

貸方

摘要

減価償却費

200万円

機械装置

200万円

償却損の計上

※機械装置(1,500万円-500万円)÷5年=200万円

※翌年以降も圧縮後の帳簿価格1,000万円を元に、同様の減価償却を続ける

まとめ

補助金の会計処理は、非常に煩雑であり専門的な知見が求められます。不明な方は、ぜひ税理士や会計士などの専門家にご相談ください。

当事務所では、法人設立や融資相談のほか、全般的な税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。

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