証憑書類の読み方とは?種類や保存期間・保存方法について解説
証憑書類は、会社が事業を行う上で必要不可欠なものであり、普段何気なく扱っている書類も多く含まれています。
ここでは、どのようなものが証憑書類に該当するのか、また、保存期間や保存方法についても解説します。
証憑書類の意味とは?
証憑書類とは、取引の事実を証明する各種書類の総称です。読み方は、「しょうひょう」。経理処理を行う上で非常に重要な書類であり、その種類は多岐に渡ります。
- 契約に関する書類
- 売上に関する書類
- 労働に関する書類
- 物品に関する書類
- その他の書類
証憑書類の作成目的は、互いに取引内容を確認し、取引が成立したことを証明することです。証憑書類は一定期間の保存義務があり、取引や金銭授受の証明、法令遵守の証拠としての役割を果たします。
そのため、税務調査や会計監査が入ったときにも、証憑書類に不備があると重大な指摘を受けることがあります。
帳票書類と証憑書類との違い
帳票は、会計に関する帳簿や伝票類のことです。具体的には入金伝票や出金伝票、現金出納帳、総勘定元帳、売掛金台帳などが挙げられます。
それに対して証憑は、取引の事実を証明する各種書類の総称で、それぞれ役割が異なります。
証憑書類の種類
次に、具体的な証憑書類の分類と、それらの代表的な書類について解説します。
契約に関する書類
契約に関する証憑書類には、次のようなものがあります。
- 銀行取引約定書:金融機関が新規の融資取引を開始するときに、債務者と取り交わす契約書
- 賃貸契約書:不動産などの貸し借りをするときに交わす契約書
- 業務委託契約書:自社の業務の一部を第三者に委託する場合に取り交わす契約書
- 取引基本契約書:継続的取引の基本条項などを定めた契約書
- 秘密保持契約書:目的に反して会社の機密情報を第三者に対して開示又は漏洩させないことを義務付ける
- 契約書
売上に関する書類
売上に関わる主要な証憑書類には、次のようなものがあります。
- 見積書:取引開始前に双方で取引金額の合意を取るための書類
- 請求書:取引完了後に代金を請求するための書類
- 領収書:代金を受け取ったことを証明する書類
これらの証憑書類の管理に不備があると、相手方の信用を損ない、企業の経営自体も危ういものとなりかねません。そのため、齟齬や紛失がないように管理することが大切です。
労働に関する書類
労働に関する証憑には、次のようなものがあります。
- 雇用契約書:雇用契約内容を明示した書類
- 給与明細書:給与総額や各種控除額を従業員に通知する書類
- 賃金台帳:労働者の給与支払い状況に関する情報を明記した書類
なお、労働に関する書類については、労働基準法に基づき5年間の保存義務が定められています。
物品に関する書類
物品に関する証憑書類には、次のようなものがあります。
- 注文書(発注書):注文内容が書かれた書類
- 納品書:納品物の明細が明記された書類
- 受領書:商品などを受領したことを証明する書類
- 検収書:商品の検収完了を証明する書類
- 棚卸表:棚卸しに伴う在庫商品の数量や金額を一覧化した書類
- 配送伝票:物品出荷の際に、配送業者から発行される伝票
その他書類
その他の証憑書類については、各種金銭の動きを示すものや、各種会議の議事録などがあります。
- 通帳:金融機関と預金者間で行われた継続的な預貯金の受払いの証明書類
- 入出金明細:ネットバンキングなどで入出金を確認する明細
- 納税証明書:納税を証明する書類
- 議事録:各種会議の内容や決定事項を記載した書類
- 稟議書:複数の関係者に承認や決裁を得るための書類
- 取締役会議事録:会社の重要な意思決定機関である取締役会の議事録
証憑書類の保存期間はどのくらい?
証憑書類の保存期間は、適用される法律とその書類の種類によって異なります。
会社法上の保存期間
会社法上での保存期間は、5年間のものと10年間のものに大別できます。その分類は、以下の通りです。
<5年間の保存が義務付けられているもの>
- 10年間の保存義務書類以外の計算書類
- 事業報告書
- 監査報告書
<10年間の保存が義務付けられているもの>
-
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 貸借対照表・損益計算書などの決算書類
- 総勘定元帳や補助簿など、事業に関する重要書類
分類の判断が難しい場合は、10年間の保存がおすすめです。
法人税法上の保存期間
法人税法では、次のような書類が定められています。
- 総勘定元帳、仕訳表などの帳簿類
- 棚卸表、注文書、契約書、領収書などの取引に関する証憑書類
これらは確定申告の提出期限の翌月から、7年間の保存が義務付けられています。
また、青色申告書を提出した事業年度で欠損金が生じた場合などは10年、2018年4月1日前に開始した事業年度は、9年間の例外規定が定められています。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、所得税法の適用を受けます。
青色申告の個人事業主であれば、総勘定元帳や仕訳帳、損益計算書、棚卸帳などの決算書類は7年間の保存が義務付けられています。白色申告の個人事業主であれば、関係書類を5年間保管しなければなりません。
また、前々年の事業所得及び不動産所得税額が300万円以下の小規模事業者は、5年間の保存が義務付けられています。
証憑書類の保存方法について
証憑書類の保存方法は、紙で保存する方法と電子データで保存する2つの方法があります。
紙をファイリングして保存する
紙で保存する際は、上記で紹介した種類別にカテゴライズして、ファイリングして保存します。現在でも多くの会社で採用されている保存方法です。証憑書類が少ない個人事業主や、小規模な企業に適している手法です。
電子保存する
電子保存の対象書類について定めた法律には、電子帳簿保存法とe-文書法があります。このうち、電子帳簿保存法は2022年1月に改正法が施行され、一定の要件を満たしている場合は、国税関係の帳簿や書類において電子的保存が認められるようになりました。
主な対象は、総勘定元帳や貸借対照表などの帳簿類、見積書・納品書などの国税関係の証憑です。証憑については、電子取引とスキャナ保存が認められています。
電子取引
PDFデータやスクリーンショットなどのデータを用いた電子取引は、通信手段とは関係なく電子取引に分類されます。法的効力を有する保存要件は、以下の通りです。
- システムの操作マニュアルが実装されている
- データの確認ができるようにディスプレイやプリンタが備え付けられている
- 検索機能が確保されている
スキャナ保存
スキャナ保存は、紙で受領した証憑書類をスキャナで読み取り、電子データとして保存する手法を指します。一定の画質の担保や所定期間内にタイムスタンプを付与することが義務付けられています。
ただし、訂正や削除の確認ができる、もしくは訂正や削除ができないシステムでスキャンした場合においては、タイムスタンプは不要です。
証憑書類の保存期間を守らない・紛失した場合はどうなる?
保存期間を守らなかった場合には、以下のペナルティが課されます。
- 青色申告の取消し
- 欠損金の繰越が認められない
- 仕入れ税額控除が認められない
- 税務署側に有利な推計課税が適用される
- 100万円以下の過料が課せられる
よほど悪質な場合を除き、実際には行政指導で済むことが多いです。
まとめ
証憑書類は各種取引の重要な証拠となるものです。近年では、業務の効率化を図ることを目的として、書類の電子化などに関する法改正がなされており、逐一最新の情報をチェックするのは難しいかもしれません。
保存期間や保存書類、保存方法について不明な点がある場合には、ぜひ専門的な知見を有した税理士・会計士に相談しましょう。