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自己資本比率の目安はどのくらい?増やす方法について

企業の経営状況の把握に用いられる指標、自己資本比率。金融機関から資金調達をするときに、真っ先にこの自己資本比率がチェックされます。本記事では、自己資本比率の計算方法、自己資本比率の目安や上げ方について解説いたします。

自己資本比率とは?

負債と純資産を合わせた総資本のうち、自己資本の割合を指します。
なお、自己資本とは、資本金、資本剰余金など主に返済の必要のない資本で構成されています。

自己資本比率が高いほど、企業の安全性があると判断され、銀行の融資審査を通過しやすくなります。自己資本比率と似た言葉にROEがありますが、ROEはReturn on Equityの略で、自己資本利益率をいいます。自己資本にたいしてどれだけの利益が生じたかを示す指標です。

自己資本、株主資本、純資産の違い

自己資本と混同しがちなのが、株主資本と純資産の違いです。

まず、株主資本とは、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式の4つの内包します。自己資本はこの株主資本に加え、さらにその他包括的利益累計額を含みます。純資産とは、自己資本が包括する5つの資本に加え、新株予約権と非支配株主持分も含みます。

株主資本 資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式
自己資本 株主資本+その他包括的利益累計額
純資産 自己資本+新株予約権と非支配株主持分

 

自己資本比率の計算方法

自己資本比率は以下の数式で計算されます。

自己資本比率(%)=自己資本/総資本×100

仮に自己資本が500万円、総資本が2000万円だったとすると、500万円/2000万円×100=25%となります。

財務レバレッジとは?

自己資本比率を語るうえで外せない指標が、財務レバレッジです。

財務レバレッジとは、借入金や社債を発行しレバレッジを聞かせることで、自社の総資産が自己資本の何倍増えたかを表す指標です。借入金などの負債が多ければ多いほど財務レバレッジは高くなります。自己資本比率の逆数で計算できます。

財務レバレッジ=総資本/自己資本

自己資本比率の目安はどのくらい?

中小企業庁の調査では、自己資本比率の全産業加重平均値は、40.92%となっています。

参照:令和元年中小企業実態基本調査速報

また、「TKC経営指標データベース」によれば、優良企業で53%。黒字企業で27%、赤字企業 -4%なので、まずは25〜30%を目標値にすると良いでしょう。

ただし、一概に低いことが悪いわけではありません。例えば、クレジットカード業、割賦金融業は10%台ですが、預金、手数料など他人資本を元手に運営する性質をもつため、自己資本比率は結果的に低くなってしまっています。

また、自己資本比率が高くても、その利益を投資に回してしまっていて、てもとに現預金や流動性資金が十分に残っていない場合は、健全な財務状況ではないといえます。

業界ごとの自己資本比率の平均値

2019年企業活動基本調査のデータをもとに、業界ごとの自己資本比率の平均値、目安をまとめました。

業種・業態 自己資本比率
情報処理・提供サービス業 44.8% 
ソフトウェア業 47.8% 
飲食サービス業 45.3%
出版業 76.5%
新聞業 53.5% 
映画・ビデオ制作業 62.6%
石油製品・石炭製品製造業 26.7%
ガス業 48.3%
電気業 20.6%
鉄鋼業 43.7%
クレジットカード業、割賦金融業 10.1%

クレジットカード業、割賦金融業、電気業、石油製品・石炭製品製造業を見てみると、自己資本比率が30%を下回っているのがわかります。

特にクレジットカード業、割賦金融業にいたっては、10.1%と最も自己資本比率が低いですが、実はこれには大きな理由があります。銀行が倒産してしまうと、経済に深刻な影響を与えるため、BIS規制(バーゼル規制)により、自己資本比率が規制されています。なお、海外拠点を持たない銀行は4%、国際的に活動する銀行は8%以上と定められています。

最も自己資本比率が高いのがセブン銀行で、2020年3月では単体で21%、連結で20.3%です。

自己資本比率が高いと得られるメリット

自己資本比率が高いと、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

選択肢が増える

自己資本比率が高いということは、それはすなわち内部留保が多く、新規事業の立ち上げ、事業ドメインのピポットなど、経営の舵取りにおいて、選択肢が増えます。
また、ビジネス環境の変化に対応し、設備投資や研究開発にも費用をかけることができます。

銀行融資の審査が通りやすくなる

自己資本比率が高ければ、経営が安定していて倒産する可能性が低いと判断されるため、銀行からの借り入れもしやすくなります。

自己資本比率を増やす5つの方法

自己資本比率を増やすには、自己資本を増やす(中小企業の場合は増資を行うか税引後の利益を蓄積する方法が一般的です。)、もしくは負債を圧縮するかのいずれかをおこなう必要があります。

不良資産(遊休資産)の処分

総資本が多ければ良いわけではありません。
売れ残りの在庫、稼働率が低下している設備、回収不能の売掛金といった不良資産を処分すると、負債の返済にも充てられ、資金繰りが改善します。

固定費の圧縮

人件費の削減、採算の合わない事業撤退や、生産工程を改善し、棚卸資産回転期間を短くするなどして、流動負債を削減します。

収益率を高める

売上は十分にあるのに、利益が少ない場合は、中間業者の排除、商品やサービスの高付加価値化、リードタイムの短縮などで収益率を高める必要があります。

増資をする

増資で得たお金は、融資と異なり、使用用途が自由で、返済義務がありません。

ただし、利益が発生した場合は、配当やキャピタルゲインなどのコストがかかります。なお、無償増資の場合は、内部留保や資本準備金などの利益を資本金に組み入れるにすぎず,自己資本比率は変動しません。

関連記事:資本金の増資とは|株式会社、合同会社別で手続きや必要書類を徹底解説

DES(デッドエクイティスワップ)を活用する

DES(デッドエクイティスワップ)とは、負債と資本を交換する取引で、債務の株式化ともいわれます。

具体的には、債務者は、借入金を返済しないかわりに、債権者へ株式を発行します。

こうすることで、借入金が減り、資本金が増えるため、結果的に自己資本比率が高くなります。ただし、この方法は第三者の株主が増える、債務免除益として課税され税負担が重くなるなどのデメリットもあり、債務超過を脱するなど、最終手段に使われる手法です。

まとめ

自己資本比率は、会社の中長期的な経営状況を把握できる大切な指標です。

本記事で紹介した方法を参考に、自社の自己資本比率を高めていきましょう。

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