法人の決算月はいつがベスト?決め方をわかりやすく解説
法人設立で迷うのが決算月の決め方です。
一般的には3月を決算とする会社が多いですが、実は決算月は3月でないといけないという決まりはありません。自由に設定できます。
本稿では、決算月の重要性と、決め方について解説いたします。
決算月とは?
決算とは1年間の財務状況や経営成績を明らかにする手続きです。
具体的には、賃借対照表やキャッシュフロー計算書、損益計算書などの決算書を作成し、経営状況を可視化し、次の期の会社の経営戦略や資金調達の計画、投資家や株主への業績報告をおこないます。
一ヶ月単位で行われる決算を月次決算、3ヶ月ごとにおこなわれる決算を四半期決算、事業年度が半年経ったときに行われる決算を中間決算といいます。本決算は事業年度末におこなうもので、もっとも重要な決算になります。この本決算をおこなう月が決算月です。
決算月はいつが多い?多い順に解説
法人の決算月や決算日は特に明確な定めはなく、いつでも自由に決められます。
日本では決算月はどの時期が多いのでしょうか。
国税庁の調査によると、もっとも多いのが3月で543709社で20.58%、続いて9月が290,587社で11.0%、8月で238,234社で9.02%となりました。
参照:決算期月別法人数
ちなみに、決算月は株式法人だけでなく、財団法人や非営利会社もルールは同様です。
個人事業主の決算月はいつ?
個人事業主の決算日は、法律で12月31日と定められているため、決算月は自動的に12月になります。つまり、1月1日〜12月31日分が決算の対象となります。
決算月の決め方
3月決算が多いから、では自社の決算月も3月にしようというのは早計です。
ここでは、決算月の決め方についてご紹介します。
免税期間を考慮する
資本金が1,000万円未満の法人は、1期目において消費税が免税されます。さらに、2期目も免税の対象になる場合は、下記のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 特定期間(前事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間)の課税売上高が1,000万円以下
- 特定期間(前事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間)の給与等支払額の合計が1,000万円以下
会社は決算によって期が変わります。つまり、設立時期からできるだけ離れた月を決算月とすることで、免税期間を最大限延ばすことができます。
売上が多い月を期首にする
年間を通じて売上に変動がなく安定している業種・業界では、特に考慮する必要がありませんが、季節によって売上に波がある業種・業界では、売上の多い月を決算月にするのはおすすめしません。
というのも、繁忙期に想定以上の売上が出てしまうと、十分な税金対策ができないまま、決算を迎えてしまうためです。
期首であれば、余裕をもって税金対策ができますし、繁忙期で決算業務が疎かになることも少なくなります。
支払いが発生する月を避ける
決算日から2ヶ月以内に、法人税、事業税、住民税、消費税の納付が義務付けられています。
賞与や源泉所得税、固定資産税などの支払いと重複しないよう、決算月を決めましょう。
決算月・決算日の調べ方
決算月、決算日がわからなくなってしまったら、どこを見ればいいのでしょうか。
決算日は会社のルールでもある定款の「計算」という箇所に記載があります。
万が一、定款が手元にない場合は、税務署または都道府県税事務所に提出した法人設立届出書の控えを確認しましょう。
控えが見当たらなければ、税務署に直接出向き、問い合わせることもできます。万が一、定款を紛失してしまった場合は、必ず再発行をしてください。
会社法第31条 定款の備置き及び閲覧等によって、株式会社の成立後は本店および支店に備えおくことが定められているためです。
また、助成金の申請や許認可申請、法人口座の開設で、定款の原本提出を求められることがあります。
法人設立から5年以内では、法務局に登記申請書の閲覧を申請すれば、その事由が妥当と判断された場合のみ、閲覧ができます。
しかし、5年以上経過してしまうと破棄されてしまうため、公証役場で定款の再発行をおこないましょう。
ただし、公証役場の保管期間も20年までとされているので、注意が必要です。
決算月の変更手順について
決算月は、決定後にも所定の手続きをおこなえば、変更できます。
株主総会で特別決議を実施する
決算月を変更するには、株主総会の特別決議で、議決権の3分の2以上の賛成を得る必要があります。
特例有限会社では、株主の50%以上が出席し、かつ株主の議決権の4分の3以上の賛成を得る必要があります。
決議した内容は、株主総会議事録としてまとめます。
また、異動事項の確認のため、登記事項証明書、現行定款の写しの提出も必要になることがあります。
税務署へ届け出をする
法務局へ登記の届け出は不要です。
管轄の税務署や都道府県税事務所へ、異動届出書と株主総会議事録の写しをあわせて提出します。
決算月の開示
上場会社では、連結財務諸表規則第3条第3項「連結決算日を変更した場合には、その旨、変更の理由および当該変更に伴う連結会計年度の期間を連結財務諸表に注記しなければならない。」に基づき、決算月を変更した旨の開示をする必要があります。
まとめ
決算月はあとからでも変更可能ですが、税務署や都道府県税事務所などへ異動届出書を提出する必要があり、手間と労力がかかります。
法人設立前に、事業の売上や免税期間などを考慮して、決算月を決めておきましょう。