役員給与の注意点
役員給与を決定する際には、次のことを注意してください。
- 役員給与として毎月支給する月給は毎月定額であること。
- 役員に賞与を支給する場合には、事前に賞与の額を決め、税務署に届出書を提出する必要あること。
- 法人設立の場合に役員へ賞与を支給したい場合には、法人設立から2ケ月以内に賞与の届出書を税務署に提出する必要があります。
- 役員給与の月額や事前に届出た賞与を変更しようとする場合には、株主総会や取締役会で決議を行い、議事録を残すことが必要であること。
- 法人設立から3ケ月以内に役員報酬の金額を決める必要があること。
もし、上記の手続きをしなければ、役員の給与は税金の計算上、費用として認められなくなってしまいますので・・。
役員給与には、もう一つの注意点があります。
平成22年4月1日以後に開始した事業年度については、下記の取扱いは法律改正により適用はありません。
それは、【特殊支配同族会社の業務主宰役員給与】というものです。
わかりやすくいえば、特殊支配同族会社に該当した場合には、業務主宰役員に対して支給する役員給与の一部は税金の計算上、経費とは認められないという制度です。
特殊支配同族会社とは
(1)業務主宰役員(通常は社長)及びその親族等の持株割合が90%以上 で、かつ
(2)全役員(非常勤の役員を除く)のうち、社長とその親族等の役員の数が50%超 の場合が特殊支配同族会社に該当します。
では、特殊支配同族会社に該当しないようにするにはどうすればよいか?
(1)社長とその親族等の持株割合を90%未満にする。
(2)非常勤ではない役員の数を増やし、社長とその親族等の役員の数を50%以下にする。
(1)と(2)に共通ですが、親族ではない他人が役員になったり、他人に株式を譲ることになりますので、対策は慎重に行ってください。
特殊支配同族会社となっても適用除外となる場合
特殊支配同族会社に該当しても下記のいずれかに該当した場合には、社長の役員給与の一部が税金を計算するうえで、費用とならない取扱いから除かれる場合があります。
(つまりは、通常通り社長に対する給与が経費となります。 (1)基準所得金額が年1600万円以下 (2)基準所得金額が1600万円超3000万円以下で、かつ過去3年の社長の給与の平均が基準所得金額の50%以下 基準所得金額とは、【過去3年分(社長の役員給与と会社の利益)を平均した金額】 ただし、設立1期目の場合には過去がないので、【社長の給与の年額+会社の利益】で計算をします。 簡単にいうと、会社の利益と社長の給与の年額の合計が1600万円以下であれば、社長の役員給与は税金計算上も全額経費となるということです。(この説明ではわかりやすくしていますので、実際の計算はもう少し、複雑になる場合があります。)
特殊支配同族会社に該当した場合し、適用除外の要件にも該当しない場合
(社長の役員給与の一部が経費と認められないことになります。)
特殊支配同族会社に該当し、適用除外の要件にも該当しない場合には、社長の役員給与のうち、給与所得控除の金額に該当する分の金額が会社の費用から除外されることになります。
社長の給与年額 |
会社の費用から除かれる金額 |
---|---|
65万円以下 |
社長の給与の全額 |
65万円超180万円以下 |
社長の給与の金額×40% (その金額が65万円に満たない場合には65万円) |
180万円超360万円以下 |
72万円+(社長の給与の金額−180万円)×30% |
360万円超660万円以下 |
126万円+(社長の給与の金額−360万円)×20% |
660万円超1000万円以下 |
186万円+(社長の給与の金額−660万円)×10% |
1000万円超 |
220万円+(社長の給与の金額−1000万円)×5% |
例えば、社長の給与の金額が1000万円だった場合には
186万円+(1000万円-660万円)×10%=220万円が税金を計算するうえで、経費とは認められなくなります。
影響する税金の額は220万円×40%=88万円も税金が増加することになります。
役員給与には十分気をつけてくださいね。