川村会計事務所|大阪・堺の税理士事務所

支払調書を取引先に発行する義務はある?

年に1回、税務署への提出が義務付けられている法定書類、支払調書。初めて、法人や個人事業主に外注した方は、「どのような場合に支払調書を作成しないといけないのか」「取引先に支払調書を発行する必要はあるんだっけ」など、さまざまな不明点があると思います。

本記事では、支払調書の取引先への発行義務の有無に焦点を当てて解説します。

支払調書とは?

税務署へ提出が義務付けられている法定書類の一つです。
具体的には、取引先である法人や個人事業主に対して支払った報酬額や源泉徴収税額を集計・記載した書類のことを言います。

支払調書の種類

支払調書には大きく以下の4つの種類があります。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

個人事業主や法人に報酬を支払った際に、作成・提出が必要になります。一般的に支払調書と言われるものは、この報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書を指しています。

不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書

不動産などの売買または貸付のあっせん手数料の支払いを行う場合に、作成・提出が必要となります。

なお、不動産だけでなく、船舶(総20トン数以上の船舶に限る)や航空機の売買または貸付のあっせん手数料も含みます。

不動産等の譲受けの対価の支払調書

不動産等の譲受けに際して対価を支払った場合に、作成・提出が必要となります。

また、土地や建物の購入だけでなく、借地権や地上権、船舶(総20トン数以上の船舶に限る)や航空機の売買も含みます。

不動産の使用料等の支払調書

不動産の使用料などを支払った場合に作成・提出が必要となります。建物や土地の賃借料だけでなく、敷金・礼金、補償金、更新料なども含まれます。

支払調書の発行義務はある?

結論を述べると、支払調書の発行義務はありません。発行をする会社も多いですが、あくまで慣習として行われているだけであり、義務ではありません。

そのため、万が一発行しなかったとしても、罰則はありません。

源泉徴収票であれば、年末調整時や従業員の離職時に発行義務があります。これは、会社しか源泉徴収票の発行ができないためです。

しかし、個人事業主は請求書を発行し、かつ確定申告をしているため、自身で税金額を計算することができます。

また、2016年1月1日以後からは、支払調書においてマイナンバー(個人番号)または法人番号の記載が義務化されました。
特定個人情報の提供制限によって、マイナンバー入りの支払調書の控えをそのまま送付することはできないので注意しましょう。

取引先である法人や個人事業主に対して送付する支払調書の形式には規定はありません。

発行義務がないことを理解してもらった上で、GoogleスプレットシートやExcelのような表計算シートやPDFなど任意の形式で提出しましょう。

発行義務はないが、提出義務はある

報酬を支払った事業者に対する発行義務はありませんが、税務署へ支払調書を提出する義務はあります。

また、個人事業主が別の個人事業主に外注した際にも、法人と同様に支払調書の作成・提出義務が発生します。

ただし、以下に該当するものは対象外になります。

  • 常時2人以下の家事使用人だけに給与や退職金を支払っている
  • 弁護士報酬などの報酬や料金だけ支払っている
  • 人を雇用せずに事業を行っている

支払調書の提出範囲や期限

一般的な支払調書「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」に限定して解説します。支払調書の提出範囲は、所得税法で下記のように定められています。

提出範囲
  • 外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサー等の報酬・料金、バー、キャバレー等のホステス等の報酬・料金、広告宣伝のための賞金については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
  • 馬主に支払う競馬の賞金については、その年中の1回の支払賞金額が75万円を超えるものの支払を受けた者に係るその年中の全ての支払金額
  • プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金については、その年中の同一人に対する支払金額の合計額が5万円を超えるもの
  • 弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの

支払調書の提出期限は?

支払調書は、翌年の1月31日までに所轄の税務署に提出しなければなりません。万が一、1月31日を過ぎてしまった場合は、下記で説明する罰則を課せられる恐れがあります。

支払調書を提出しないと、どんな罰則がある?

支払調書を期日内に提出しない、または提出し忘れた場合は、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が課せられることがあります。なお、確定申告と違って納税ではないため、追徴課税のペナルティは発生しません。

支払調書の作成にあたってよくある質問

最後に、支払調書の作成や発行にあたってよくある質問について、まとめてみました。

支払調書の作成に、マイナンバーの記載は必要?

前述したように、2016年1月1日以後から支払調書にマイナンバー(個人番号)または法人番号の記載が義務化されました。
そのため、報酬を支払った事業者にマイナンバーを共有してもらう必要があります。

支払調書と源泉徴収票の違いは

源泉徴収票は、事業者が自社の従業員に対して発行する法定調書のことを言います。

給与所得に関する源泉徴収票の他に、退職金の支払いに伴う退職所得の源泉徴収票や年金などの支払いに伴う公的年金等の源泉徴収票などもあります。
また、源泉徴収票の内容は年末調整で作成されます。

一方、支払調書は、取引先である法人や個人事業主に対して支払った報酬額や源泉徴収税額を集計・記載した法定調書を指します。
源泉徴収票と異なり、支払調書は年末から年始にかけて事業者が作成を行います。

源泉徴収の対象に含まないものはある?

取引において、ほとんどのケースで源泉徴収が発生しますが、下記に該当するものは対象外となります。

対象外のケース
  • 報酬・料金等の支払者が交通機関、ホテル、旅館等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを直接支払った
  • 懸賞応募作品入選者に対する賞金、新聞・雑誌などの投稿欄への投稿の謝金などの金額が1回5万円以下
  • 登録免許税、手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなもの

まとめ

支払調書の提出期限は、翌年の1月31日までです。提出を怠った場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる恐れがあるので、必ず忘れずに行いましょう。

支払調書の作成方法などがわからない、進め方がわからないということであれば、当事務所がサポートいたします。

ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでご連絡ください。

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