川村会計事務所|大阪・堺の税理士事務所

役員報酬の決め方|金額相場と4つの注意点

企業に勤めている人は給与という形でお金をもらいますが、経営の中枢に関わる役員は、役員報酬という形でお金が支払われます。役員報酬は自由に決められるわけではなく、ルールに基づいて決定しなければいけません。本記事では、役員報酬の決め方や変更方法について解説します。

役員報酬とは?

会社の業務執行や監督を行う取締役、会計参与、監査役といった役員へ支給される報酬のことです。

会社で働く従業員には給与を支払いますが、両者は大きく性質が異なります。給与は基本的に全額損金に算入できますが、役員報酬を損金に算入する場合、所定の条件を満たす必要があります。もし、制限がないと不当に役員報酬を高額にして法人税を減らすことができるためです。

ちなみに、2021年の3月1日に施行された改正会社法により、役員報酬の決め方の開示義務が発生します。ただし、これは監査役設置会社または監査等委員会設置会社に限り、中小企業は対象外となります。

役員報酬と役員賞与の違い

役員報酬に似た言葉に役員賞与があります。役員報酬は役員に支払う給与で、役員賞与は役員に支払うボーナスを指します。社員に支払うボーナスは損金として認められますが、役員賞与は原則損金にできません。損金に参入する場合は、後述する事前確定届出給与・利益連動給与の適用条件を満たせば、算入できます。

役員報酬の種類

役員報酬や役員賞与を損金算入できるものとしては、以下の3つがあります。

定期同額給与

毎月同額の報酬を支払う役員報酬です。支給時期は1ヶ月ごとと定められており、賞与を損金に入れたい場合は、12等分して役員報酬に合算します。事業年度開始日から3ヶ月以内に役員報酬金額を決めなければいけません。

事前確定届出給与

事前確定届出給与では、所定の時期に所定の額を支給する役員報酬です。「いつ、いくら支給をする」が固定されるだけで、定期同額給与のように支払いサイクルは毎月である必要はありません。ただし、期限までに届け出をしなければならず、万が一期限を過ぎてしまうと、損金として認められません。

また、一度でも届け出と異なる支給をすると、すべての事前確定届出給与が損金不算入とみなされます。具体的な届出時期に関しては後述します。

業績連動給与

企業の業績に連動して支給される役員報酬です。従来は利益連動給与と呼ばれていましたが、2017年の税制改正で業績連動給与に名称変更されました。ただし、業績連動給与で損金参入できるのは、有価証券報告書を開示している大手企業に限られ、中小企業は対象外になります。

役員報酬の決め方

役員報酬は、法人税を容易に節税できることから、決め方にルールがあります。具体的には、株主総会の決議や議事録の作成、税務署へ届け出という順で手続きを行います。

株主総会で報酬額を決める

定款で定めがない限りは、株主総会で役員報酬の総額を決定します。個別の具体的な金額に関しては、その後の取締役会で取り決めるのが一般的です。

議事録を作成する

株主総会および取締役会で役員報酬が決定したら、議事録を作成します。会社法第361条の取締役の報酬等には、「役員報酬は定款または株主総会の決議で定める」と規定されているため、議事録の作成・保管が必要になります。

税務署へ届け出をする

定額同額給与は、税務署への手続きは不要となりますが、事前確定届出給与は下記のように届出期限が定められています。

2期目以降
職務遂行の開始日から1ヶ月経過した日
事前確定届出給与を決定した定時株主総会の日から1ヶ月経過した日
事業年度開始から4ヶ月を経過する日

のいずれか早い日

【新規に法人を設立した場合】
設立日から2ヶ月以内

万が一、届け出の期限を過ぎてしまうと、全額、損金不算入となるため、早めに届け出を行いましょう。

役員報酬の金額相場

国税庁が行った平成30年に行った調査によれば、資本金2,000万円未満の役員報酬の相場は605万円となっています。2,000万円以上では851万円、5,000万円以上では1094万円となっています。

参照:平成30年 民間給与実態統計調査

役員報酬を決めるときの注意点

ここでは、中小企業で一般的に用いられる定期同額給与と事前確定届出給与で特に注意したほうが良い点について解説します。

使用人兼務役員は使用人給与と役員報酬で分ける

使用人とは会社と雇用関係にある従業員のことを指します。つまり、使用人兼務役員とは役員でありながら、常時使用人の職務に従事している者を言います。ただし、社長、取締役、監査役、理事長など経営上重要な地位にある者は使用人兼務役員とみなされません。

使用人兼務役員は、使用人の職務に対して発生する給与と、役員の職務に対して発生する役員報酬が混在しており、それぞれ分けて考える必要があります。

毎月同じ金額にする

定期同額給与では、毎月同じ金額を報酬として支払わないといけません。超過した分は損金不算入となります。

事業売上とのバランスを考える

役員報酬を決定したら、基本的には期末まではよほどのことがない限りは変更ができないため、売上や経費などを予測したうえで決定しましょう。また、役員報酬を増やすと法人税は減りますが、役員が支払う所得税や社会保険料は増えるので注意が必要です。

役員報酬が高額になりすぎないように注意する

同規模同業種の法人と比較して明らかに高額な役員報酬とみなされれば、損金不算入となります。職務内容や事業売上、他社の役員報酬の相場などを総合的に判断し、著しく乖離しているものは損金として認められず、場合によっては追徴課税が発生するケースも考えられます。上記で説明した定款への記載、株主総会や取締役会での決議を必ず経て決定するようにしましょう。

役員報酬を変更する方法

原則として、一度決めた役員報酬を年度の途中で変更できませんが、所定の要件を満たせば変更が可能です。

増額の要件 減額の要件
  • 当該役員が職責変更や昇格をした場合

(株主総会で決議した役員報酬総額の上限を上回る場合は、再度、株主総会での取り決めが必要です)

  • 降格した場合
  • 懲戒処分を受けた場合
  • 病気、ケガ、事故などにより、一時的に現場から離脱することになった場合
  • 会社の業績が著しく悪化した場合

まとめ

役員報酬は、会社にとって大きな経費の1つです。どんぶり勘定で役員報酬を決めてしまうと、税務署に損金として認められず、過少申告とみなされて追徴課税をとられることも。本日紹介したルールを理解し、役員報酬を決定しましょう。

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