年収1000万円超えたら法人化すべき?メリットとデメリットを解説
1000万円以上稼いだら法人化した方がいいという話を耳にしたことはありませんか?
この理由は、課税売上が1000万円以上だと消費税の課税事業者となるからです。
でも、法人化して後悔するかもと不安に思う方もいるのではないでしょうか?
本記事では、法人化のメリット・デメリットや適切なタイミングなどについて解説します。
法人化とは
法人化とは、個人事業主として経営していたビジネスを「法人(会社)」として運営することです。法人には「株式会社」や「合同会社」などの種類があり、個人事業主と法人では税金や社会保険、信用力などが大きく異なります。
法人化すると、事業の責任が個人ではなく法人に移るため、万が一の際に個人の資産を守ることが可能です。また、法人の方が税制上の優遇を受けやすく、事業を拡大しやすくなります。
個人事業主が法人化するメリット
ここでは、法人化のメリットについて解説します。
節税対策になる
法人にすると、法人税の税率が適用されるため、個人事業主の所得税の累進課税に比べて税負担を軽減することができる可能性があります。
加えて、法人は個人事業主より経費として認められる範囲が広く、課税所得を抑えることが可能です。
また、一定の要件を満たせば家族を役員や従業員として雇用することができるので、所得を分散させることもできます
社会的な信用度が向上する
法人は個人事業主と比べて社会的信用が高く、企業や金融機関との取引がしやすいです。
法人格を持つことで、契約時の信用力が増し、大手企業や公的機関と取引できるようになります。
また、融資や補助金の申請時にも法人の方が有利です。
赤字を10年間繰越できる
法人では、赤字(欠損金)を最大10年間繰り越して、将来の黒字と相殺することができます。
個人事業主の場合、赤字の繰越控除は3年間と制限があるため、長期的な経営計画を考えた場合に法人化が有利になります。
ただし、平成30年4月1日(2018年4月1日)より前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年間となっています。
(参考:青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁)
有限責任となる
法人は「有限責任」となり、会社が倒産しても出資者(株主や社員)の負う責任が出資額の範囲内に限定されます。
そのため、負債が生じたとしても個人資産を守ることが可能です。
さらに、この仕組みを活用すると、多くの出資者を募りやすくなるため、事業拡大がしやすくなります。
決算期を自由に設定できる
法人は決算期を自由に設定できるため、利益調整や税金対策がしやすくなります。
売上が増える時期や経費の支出が集中する時期に合わせて決算月を選ぶこともできるので、自社の特性や業務に合わせた財務管理が可能です。
事業継承がしやすい
法人化すると、事業を法人名義で継続できるため、代表者が交代しても会社を存続させることができます。
特に家族経営や後継者を考えている場合、このメリットは大きいです。
個人事業主の場合、事業主の変更時に取引先との契約変更や銀行口座の変更が必要になることが多いですが、法人ではスムーズな事業継承を行えます。
社会保険へ加入できる
法人の役員や従業員は厚生年金や健康保険に加入することが義務付けられます。
これにより、将来受け取る年金額が増えたり、健康保険の保障が手厚くなったりするため、従業員の福利厚生を充実させることが可能です。
個人事業主が法人化するデメリット
次に法人化のデメリットを解説します。
法人化して後悔しないよう、デメリットをしっかり理解しておきましょう。
設立や運営に費用がかかる
法人を設立するためには、登記費用や定款認証費用などが必要となり、株式会社なら約20〜30万円、合同会社でも6〜10万円の費用がかかります。
また、法人運営には毎年の決算申告や会計処理が発生し、税理士に依頼する場合の費用も考えなくてはいけません。
さらに、法人には毎年一定額の法人住民税(均等割)が発生するため、運営コストが増えてしまいます。
赤字でも税金がかかる
個人事業主であれば赤字の場合に税金が発生しませんが、法人の場合、たとえ利益がゼロでも法人住民税(均等割)が発生します。
これは自治体によって異なりますが年間約7万円程度が必要です。
利益が少なくても一定の経費が発生することを考えておく必要があります。
事務作業の手間がかかる
個人事業主に比べて法人は、税務申告や決算報告、社会保険の手続きなど、さまざまな事務作業が発生します。
特に法人税の申告は複雑で、専門知識が必要なため、税理士や行政書士に依頼するケースが一般的です。
そのため、事務作業の負担だけでなく、専門家への依頼費用も押さえておきましょう。
役員報酬の決定が必要となる
法人の代表者は、「役員報酬」として給与を設定しなくてはいけません。
役員報酬は一度決めると年度途中での変更が原則できないため、資金繰りの柔軟性が低くなります。
また、役員報酬には所得税がかかるため、法人税と合わせた税負担のシミュレーションを事前に行うことが重要です
計画的な資金管理が求められるため、慎重に判断しましょう。
法人化の適切なタイミング
いくらから法人化にするべき?という相談が多いのですが、一概に金額だけでは決められず、事業内容によって適切なタイミングは異なります。
ここでは法人化を検討するタイミングを解説しますので、参考にしてみてください。
年間利益が900万円を超えるタイミング
所得税と法人税の税率を比較し、法人化することで節税効果が出るラインは一般的に年間利益900万円以上とされています。
また、課税売上高が1000万円を超えると消費税の課税事業者となるため、このタイミングも法人化を検討しても良いかもしれません。
年収500万円で法人化するとメリットが少ない場合が多いです。
しかし、事業拡大をしたい場合など、状況次第では法人化を検討しても良いかもれしれません。
事業拡大を考えているタイミング
事業の成長を目指して、融資を受けたり従業員を雇用したりする場合は、法人化した方が良いでしょう。
法人であれば銀行や金融機関からの信用度が高まり、融資の審査も通りやすくなります。
また、従業員の社会保険や雇用契約の面でも、法人のほうが制度的に整っており、優秀な人材を採用しやすいです。
取引先から法人化を求められたタイミング
取引先によっては、個人事業主では契約できない場合があります。
特に大手企業や公的機関とは、契約条件として「法人であること」を求められることが多く、その際には法人化が必須です。
法人化することで、信頼性が増し契約も円滑に進みやすいため、新たな取引先の開拓やビジネスチャンスの拡大にもつながります。
法人化に必要な手続き・流れ
法人化の流れについて簡単に説明します。
①会社の基本事項を決定
会社名、事業内容、本店所在地、役員構成、資本金などを決めます。
②定款の作成・認証
会社のルールを定めた「定款」を作成し、公証役場で認証を受けます。
③登記申請
法務局に必要書類を提出し、法人登記を行います。
④税務・社会保険関連の手続き
税務署や都道府県税事務所に法人設立届を提出し、必要に応じて消費税や法人住民税の申請を行います。
社会保険の加入手続きを行い、従業員がいる場合は労働保険の申請も必要です。
(参照:株式会社の設立手続き | 起業マニュアル | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
手続きが複雑で必要書類も多いため、スムーズに進めるには専門家への相談をおすすめします。
まとめ|法人化手続きをするなら専門家に相談を
法人化にはメリット・デメリットがあり、適切なタイミングを見極めなくてはいけません。特に節税や社会保険の面での影響は大きいため、税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。法人化を検討する際には、まず自身の事業の規模や将来の計画を見直しましょう。そのうえで、専門家のサポートを受けながらスムーズに手続きを進めることで、より安定した事業運営を実現できます。
当事務所では、確定申告や節税対策だけでなく、税務調査や融資など幅広く税務・補助金に関する相談を受け付けております。ご希望の方は下記ダイヤルまたはお問い合わせフォームまでお気軽にご連絡ください。