資本金の増資とは|株式会社、合同会社別で手続きや必要書類を徹底解説
資本金を増資したいけど、さまざまな方法が存在し、どれがベストなのか分からない。
株式会社と合同会社でも増資の方法は異なり、また手続きも煩雑なことから悩まれる方も多いと思います。
本記事では、増資の仕組みや種類、手続方法、必要書類について解説いたします。
資本金とは?
資本金とは、会社の運営のために株主から出資してもらったお金のことです。
資本金は融資と違い、返済義務がなく自由に使えます。以前は株式会社は1,000万円以上、有限会社は300万円以上という条件が設定されていましたが、2006年の5月1日に行われた会社法改正によって制限が撤廃され、資本金は1円から設定が可能になりました。
増資とは?
資本金を増やすことを「増資」、反対に減らすことを「減資」といいます。
新規事業を設立するとき、設備投資をするときなどに株式を新規発行し、株主を募集しお金を集めます。
原則、出資を受けた資本金は返済不要ですが、配当金の負担は株主が増えるほど多くなるので注意が必要です。
増資の種類
増資は全部で大きく4つの方法があります。
公募増資
名前の通り、一般に株式発行し出資を募る増資のことです。
上場企業のみ使える増資の方法です。
株式の流通量が増えて、自己資本比率が高まる利点があるものの、既存の株主の価値が下がるという難点があります。
株主割当増資
既存株主の持株割合に応じて新株を発行する増資です。
自己資本比率が増えるため、資金調達の面で安全性が高いと判断されやすくなります。
ただし、あくまで既存株主に出資者が限定されるため、大規模な資金調達は難しくなります。
また、条件によっては課税が発生する場合があります。
第三者割当増資
株主かどうか問わず、特定の第三者に新株を発行する増資です。
株価を自由に設定でき、株式の売却先を指定できるため、未上場企業のスタートアップやベンチャー企業においてはポピュラーな資金調達の方法として用いられます。
無償増資
無償増資とは、会社の資本構成を変えることで増資する方法です。
会社が過去に積み立てた資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金を組み入れて、資本金を増資することができます。
この剰余金の資本組み入れは、株主総会の普通決議で実施できます。
もちろん、上の3つの有償増資と同じく、登記の変更が必要になります。
増資するメリット・デメリット
では、増資をすると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
先ほども書いたように、増資は融資と異なり、返済義務がなく利息もありません。
また、公募増資、第三者割当増資、無償増資など有償増資の場合は、自己資本比率が増加するため、銀行からの融資で有利に働きます。
ただし、発行株数が少ない状態で増資を行うと、持ち株比率が変化し、経営の自由度が下がるリスクもあります。
株主は出資割当に応じて議決権を保有でき、50%以上だと普通決議を単独で阻止あるいは成立を、3分の2以上保有している場合は、特別決議を単独で成立することが可能となります。
また、増資後の資本金が1000万円以上を超えると、法人住民税の均等割りの金額が高くなり、消費税の課税対象にもなります。
資本金が1億円を超えると、以下の優遇税制が受けられなくなります。
・法人税の軽減税率の適用
・少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例
・公債費の定額控除
・機械及び装置などを取得した場合の特別償却または税額控除
増資をする手続き・プロセス|株式会社の場合
株式会社の場合、増資は株主総会の決議をもって行われます。
募集事項の決議
株主総会の特別決議で、発行株数、株式の金額、振り込み期間などを決定します。
また、株式の引受人となる第三者の選定もあわせて実施します。
募集株式の引受けの申込み
募集事項の決議で決定した内容を基準に、株式引受人が申し込みを行います。
未上場企業においては、不特定多数の出資希望者へ公募するのではなく、出資希望者と協議し、個別に確定させるのが一般的です。
新株割当に関する決議
払込期日の2週間前までに、株式引受人の決定と、新株割当数や株式金額を通知します。
ただし、総数引受契約の場合、申し込みや割当決議が不要になります。
総数引受契約とは、株式引受人が、新株を全て引き受ける契約のことで、最短1日で株式発行が可能となります。
出資の履行
新株主が出資する方法は全部で2つで、金銭出資または現物出資となります。
現物出資では金銭以外の自動車や不動産、有価証券などのモノが対象になりますが、500万円以上で公認会計士や税理士の証明を受けていない場合は、裁判所に検査役の選任を申し立てる必要があります。
登記申請
払込期日の2週間前までに、法務局に登記の変更申請を実施する必要があります。
変更申請の際には、必要書類の提出に加え、登録免許税が発生します。
登録免許税は増加する資本金の0.007%とされ、資本金額が3万円以下の場合は3万円となります。
増資をする手続き・プロセス|合同会社の場合
合同会社で増資する場合、新たに社員を雇い増資する、または在籍している社員から追加出資してもらう、社外から出資してもらう3つのやり方があります。
総社員の同意
新たに社員を採用して増資する場合、既存社員が出資する場合ともに、総社員の同意が必要になります。
社員総会を設置している場合は、全体での決議での同意が必要となります。
出資金の振り込み
出資をする社員が振り込み期日までに振り込みを行います。
株式会社と同じく、現物出資も可能です。
業務執行社員の決定
最後に、業務執行社員による過半数の決議をもって資本金の金額を決定します。
また、合同会社には、「資本準備金」と「利益準備金」がないため、計上しなかった分はすべて「資本剰余金」として計上されます。
登記申請
法務局へ変更登記の申請を行います。
例えば、業務執行社員や代表社員にこれから就任する予定の社外の人から出資を受ける場合は、社員による出資の場合と提出書類が異なる場合があります。
提出書類については後述します。
登記が不要なケースも
以下のような出資方法の場合、登記は不要になります。
・既存の社員が出資し、出資金を全て資本剰余金に計上する場合
・社外の人による出資金を全て資本剰余金に計上し、かつその出資者を業務執行社員や代表社員にしない場合
増資に必要な書類
増資で必要になる書類はケースによって異なりますが、以下のようになります。
【株式会社の場合】
・申込みを証する書面
・変更登記申請書
・株主総会の議事録
・取締役会の議事録
・資本金計上証明書
・払込証明書or現物出資証明書
・謄本(検査役の報告に関する裁判があったとき)
・株主全員の期間短縮同意書
【合同会社の場合】
・総社員の同意書
・業務執行社員の決定書
・払込証明書or現物出資証明書
・資本金計上証明書
社外の人が出資をした場合、上記に加えて、定款と就任承諾書が必要となります。
まとめ
資本金の増資をすることで、信用力が高くなり、取引先の開拓や銀行融資の面で有利に働きます。
ただし、持ち株比率が変化し、経営の自由度が下がるリスクもあります。
どの増資方法がベストか、自社の事業展開や方向性と照らし合わせながら決めましょう。