法人設立にかかる期間・スケジュールと手続きの流れ【合同会社・株式会社】
法人設立をしたいけど、どのくらいの期間がかかるのか分からない。
法人設立には、多くの手続きがあり、専門的な知見がないとどこから手を付けていいか分からないですよね。
合同会社の設立、株式会社の設立、個人事業主から法人化する、手段によって、それぞれ法人設立にかかる期間は異なります。
本記事では、まず法人設立までにどのような手続きが必要になるかと、かかる期間について解説いたします。
法人・会社設立までの流れ
法人設立の期間について解説する前に、まず法人設立で必要となる主な手続きを解説いたします。
法人設立の手続きには、大きく「事前準備」「定款作成」「定款認証」「資本金払込」「会社印鑑の作成」「登記申請」の6つのプロセスがあります。
事前準備
法人設立をする前に、決めておく事項は主に以下の6項目になります。
この事前準備を明確にしておくと、後のプロセスがスムーズになり、法人設立までの期間を短縮できます。
・会社名(商号)
・事業目的
・本店所在地
・事業年度
・資本金
・株式譲渡の有無
・役員構成
会社名
会社名は好きに決められるわけではなく、基本的なルールが存在します。
まず、前株か後株か、いずれかの表記を選ぶ必要があります。
また、&(アンド)や.(ピリオド)といった記号は、区切る際の使用に限られており、会社名の先頭や末尾に使用できません。
また、すでに存在する会社名と類似した名称も、商標権侵害で訴訟されるリスクがあるため、なるべく回避したほうがよいでしょう。そのほか、その会社名でドメイン取得ができるかなども合わせて確認しておくとベターです。
関連記事:会社名(商号)の決め方|使ってはいけない文字やルールとは
事業目的
事業目的では、具体的に行う事業について記載します。
なお、事業目的の変更・追加は、株主総会の特別決議や定款の変更、法務局への登記変更など、多くの手続きが発生するため、現時点で決定している事業に関しては、全て盛り込んでおきましょう。
関連記事:事業目的の書き方|たくさん書いてもOK?違反による罰則や注意点について
本店所在地
自宅の住所、シェアオフィス、バーチャルオフィスでも問題ありませんが、法人口座を開設審査を考えると、専用事務所を所在地にしておいたほうが良いでしょう。(審査に落ちる可能性が低くなります)
関連記事:本店所在地とは|本社所在地との違いや変更手続きについて
事業年度
事業年度とは、会社の決算時期のことを言います。
1年以内であれば特に指定はされていません。
ただし、事業年度のサイクルが多いほど決算業務が増えるため、通常は1年を事業年度とします。
関連記事:法人の決算月はいつがベスト?決め方をわかりやすく解説
資本金
極端な話、資本金は1円からでも可能ですが、法人設立後に想定される収支をもとに必要な資本金を決めるのが一般的です。
理想的な資本金は、業種、業界によって異なりますが、業務用機材、建材、倉庫、工場や在庫を多く抱える業種の場合は、数百万円以上の資本金があると安心です。
株式譲渡の有無
株式譲渡の有無とは、株式公開にするか非公開にするかを選択することを指します。
一般的に、できたばかりの小さな会社は譲渡制限をつけます。
理由としては、面識のない人や敵対関係にある人が株主になることを防止するためです。
役員構成
会社法が施行されるまでは、3名以上の取締役と1人の監査役を置くことが必要でしたが、現在は発起人1人だけでも設立が可能となりました。
定款作成
定款とは、事業目的や資本金など会社を運営していくための基本的なルールが記されたものを指します。
定款は、株式会社なら発起人による作成が必要となります。
特に、こだわりがなければ、定款のサンプルや雛形などもあるため、それこそ数時間程度で完了させることもできます。
定款認証
定款を作成しただけでは効力を持たず、公証役場にて認証を受ける必要があります。
また、定款認証には以下の書類が必要となります。
・定款(3通)
・発起人の印鑑証明書(全員分)
・収入印紙(紙の場合)
・発起人の実印
・身分証明証
・委任状(代理人が定款認証に出向く場合)
定款認証の前に、内容に間違えがないか公証役場にFAXなどで確認してもらうと、修正の手間がかからず、スムーズに済ますことができます。
混み具合や修正内容によりますが、30分〜1時間程度で完了します。
資本金払込
この時点では、まだ法人設立されていないため、法人口座を解説できません。
そのため、個人名義の口座から資本金を払い込みます。
なお、資本金を振り込む日時は、定款認証された日よりも後である必要があるので注意が必要です。
資本金の払込が終わったら、払込証明書を作成します。
払込証明書とは、発起人から払込がされたことを証明する書類のことを指します。
払込証明書は、通帳のコピーを封入する表紙を文書ソフトなどで作成するだけのもので、作成にはさほど時間を要しません。
注意したいのは、払込証明書と混同しがちな払込金保管証明書です。
募集設立の場合は、登記申請の際に払込金保管証明書が必要となります。
払込金保管証明書の発行は、銀行の審査の関係などもあり、1週間〜2週間程度かかります。
関連記事:資本金払込とは|預け入れではダメ?手順やタイミングについても解説
会社印鑑の作成
通常、代表者印(会社実印)、銀行印と角印の3つが必要となります。
印鑑のサイズ、書体、素材などは自由に選ぶことができます。一般的には、篆書体、16.5mm~24.0mmのサイズで作られることが多いです。
登記申請
登記申請に必要な書類と登記申請書を準備し、法務局へ提出します。
特に、提出書類に不備がなければ、7〜10日程度で登記が完了します。
この登記申請が完了した日が「会社設立日」となります。
法人設立から取引開始するまで
登記申請をしたら、すぐに取引開始できるわけではありません。まだこの他にすべき手続きがいくつかあります。
法人口座の作成
取引するには、まず法人口座が必要です。
必要書類の取得、記入、口座開設の申込、面談日程の設定、銀行による審査、預金通帳やキャッシュカードの郵送などのプロセスを含めると、トータルで2週間〜1ヶ月程度は見ておいたほうが良いでしょう。
書類等の届け出をする
法人設立してから、各役所に必要書類を期限内に提出する必要があります。
法人設立をしてすぐ提出する必要がある書類は以下のとおりです。
- 法人設立届出書…会社設立から2か月以内
- 青色申告の承認申請書…「会社設立から3ヶ月以内」または「最初の事業年度終了日」のうち、いずれか早い日の前日まで
- 法人設立届出書…東京23区は会社設立から15日以内それ以外は原則として会社設立から1か月以内
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届…会社設立から5日以内
許認可の申請
中古車、中古品販売、旅館・ホテル、ガソリンスタンドといった届出や登録、認可が必要な業種・職種に関しては、指定の役所や行政機関への申請が必要となります。
法人設立でかかる期間・スケジュール
事前準備から登記申請完了まで含めれば、株式会社・合同会社ともに、最短でも10日前後、取引開始できる状態までであれば、1ヶ月は見ておく必要があります。
株式会社・一般社団法人の場合
項目 |
期間 |
定款作成 |
数時間 |
定款認証 |
30分〜1時間 |
払込金保管証明書の発行 |
1〜2週間(募集設立の場合) |
登記申請 |
7〜10日程度 |
法人口座の作成 |
2週間〜1ヶ月くらい |
合計 |
1ヶ月(最短) |
合同会社の場合
まず、株式会社での大きな違いは提出書類が少ないことと、定款認証のプロセスがないことです。
そのため、株式会社よりもスムーズに法人設立を行うことができます。
項目 |
期間 |
定款作成 |
数時間 |
登記申請 |
7〜10日程度 |
法人口座の作成 |
2週間〜1ヶ月くらい |
合計 |
22日(最短) |
関連記事:法人設立で、株式会社と合同会社どちらが良い?違いをわかりやすく解説
法人成り(個人事業主の法人化)の手続き期間は?
個人事業主の方が法人化することを「法人成り」と呼びます。
法人成りの場合は、通常の法人設立の手続きに加え、個人事業の廃業手続き、事業用の資産・負債の引き継ぎや各契約における名義変更が必要となります。
特に、各契約における名義変更は、不動産(事務所など)の貸主との交渉、取引先との契約の交わし直しなども含むため、契約が多いほど時間がかかります。
個人事業の廃業手続き
個人事業を廃業するには、「個人事業の廃業届出書」「所得税の青色申告の取りやめ届出書」が必要です。
その他、従業員に給与を支払っていた場合は、「給与支払事務所等の廃止届出書」、消費税の課税事業者だった方は、「消費税の事業廃止届出書」もあわせて提出する必要があります。
事業用の資産・負債の引き継ぎ
資産には、備品、在庫なども含みます。
資産・負債の引き継ぎには、大きく「売買契約」「現物出資」「賃貸借契約」の3つの方法があります。
関連記事:現物出資とは|メリット・デメリットについてわかりやすく解説
まとめ
法人設立は、最短で1日という情報も目にすると思いますが、法人口座を開設する、取引開始の状態までを考えれば、1ヶ月程度の期間を要します。
法人設立の期間を短縮させるには、とにかく手際よく準備していくことが重要となります。
当税理士事務所では、法人設立の支援相談を行っています。ぜひ、問い合わせください。