個人事業主の開業手続きの方法|必要書類や費用について
個人事業主として法人用口座の開設や確定申告をおこなう場合、開業届を提出する必要があります。
法人設立のように、費用や時間がかかると思われている方も少なくないのでは?
本稿では、個人事業主が開業する手続きについて解説いたします。
開業届とは?
開業届とは、個人事業主として事業活動を開始する旨を税務署に通知する届け出です。
正式には、個人事業の開業・廃業等届出書といいます。
開業届は、不動産所得・事業所得・山林所得が生じる事業をおこなう事業者に提出が義務付けられています。
開業届はいつまでに提出すればいい?
事業をスタートしてから1ヶ月以内に提出することが推奨されていますが、罰則規定はありません。
個人事業主の開業と法人設立の違い
個人事業主が事業を開始する場合は、基本的に開業届を提出するだけで個人事業主になることができます。
しかし、法人を設立する場合は、法人設立届書のほかに、定款作成、定款認証、登記申請などの手続きが必要になります。
最短でも3週間〜1ヶ月程度かかります。
関連記事:法人設立にかかる期間・スケジュールと手続きの流れ【合同会社・株式会社】
開業届の手続きでかかる費用
法人設立のように、定款作成、定款認証、登記申請などの手続きもなく、開業届や青色申告承認申請書の提出で費用はかかりません。
個人事業主の開業手続きの流れ
ここでは、個人事業主の開業手続きの流れについて解説いたします。
事業所の住所を決める
開業届を提出する前に、事業所の住所を決めます。
事業所とは、オフィスや事務所の所在地を指します。
似たものに納税地がありますが、こちらは原則、自宅の所在地となります。
もし、自宅と事務所を兼ねる場合は、納税地と同じ住所で問題ありません。
屋号を決める
個人事業主では、屋号の有無は自由です。
あとから、屋号を変更できますが、最初から屋号をつけたい場合は、開業届を出す前に考えておきましょう。
ちなみに、法人名と同じく、個人事業主の屋号にもルールがあります。
- 〇〇法人や〇〇株式会社のように、株式会社や法人と誤認するもの
- すでに他社が商標を取得している屋号を使用する
- 著名なサービスやブランド名と誤認するもの
- そのほかの会社名や事業主の屋号と著しく類似するもの
個人事業主であっても、商標権侵害をしている場合は、損害賠償請求をされる恐れがあります。
屋号を決めるさいは、重複していないか確認しましょう。
青色申告承認申請書の作成
青色申告をする場合は、青色申告承認申請書が必要です。
これを提出しないと、自動的に白色申告とみなされます。青色申告承認申請書は申告年の3月15日までが提出期限となっているため、開業年月日が1月や2月の方は、開業届と合わせて提出することを推奨します。
万が一、期限を過ぎた場合は、翌年からの反映になるので、注意しましょう。
マイナンバーカードの作成
開業届では、マイナンバーを記載する箇所があります。
通知カードでも対応可能ですが、e-tax(電子申告)をするさいに必要となるので、早めの作成をおすすめします。
また、2020年分から、e-taxでないと、青色申告特別控除65万円が55万円に下がってしまうことも忘れずに覚えておきましょう。
個人事業主の開業で必要な書類一覧
開業で必要な書類は以下の通りです。
- 個人事業の開業届出・廃業届出書(開業届)
- 印鑑
- 個人番号(マイナンバー)が分かるもの
- 本人確認書類
- 青色申告承認申請書
印鑑は認印でも問題ありませんが、シャチハタのようなスタンプ式の印鑑は利用できません。
また、個人番号が分かるものであれば、マイナンバー通知カードでも問題ありません。条件によっては下記のような書類も必要になります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
従業員へ給与を支払う事業主の方が提出する書類で、源泉所得税の納付回数を年2回に減らせます。
特に、却下の通知がなければ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。
青色専従者給与に関する届出書
青色専従者給与に関する届出書は、配偶者や両親などの家族従業員(専従者)に渡した給与を全額経費にできる書類です。
青色専従者給与を申請する場合は、青色申告承認申請書の提出も必要になります。
業種によっては許認可の届け出が義務となる
業種によっては、事業開始前に、許認可の届け出が必要な場合があります。
万が一、届け出をしないままでの営業、いわゆる無許可営業をしてしまうと、刑事罰が適用されます。
業種によって罰則内容は異なりますが、飲食店では2年以下の懲役または200万円以下の罰金、建設業では、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課されます。
下記に、代表的な許認可をまとめました。参考にしてみてください。
種類 |
業種 |
届出先 |
届出 |
美容・理容 |
保健所 |
クリーニング業 |
||
登録 |
旅行代理業 |
運輸局 |
許可 |
飲食店、旅館・ホテルなど |
保健所 |
人材紹介・派遣業 |
労働局 |
|
運送業 |
陸運支局 |
|
中古車売買、リサイクルショップ、質屋、古書店など |
警察署 |
|
免許 |
酒類販売 |
税務署 |
不動産業 |
都道府県庁、国土交通大臣 |
まとめ
法人設立と混同している方も多いと思いますが、個人事業主の開業は法人設立と比べると手続きが非常に簡単です。
開業届を出さずに開業してしまっても、罰則規定はないですが、青色申告特別控除の65万円分は適用されません。
継続して事業をおこなうのであれば、必ず開業届を作成し提出しましょう。