小規模企業共済はいくらもらえる?加入資格や手続きをわかりやすく解説
中小企業の経営者や個人事業主であれば、「小規模企業共済」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
中小企業経営者や個人事業主が廃業または退職後の生活のために積み立てる共済制度です。
月々の掛け金1,000円から加入ができ、掛け金は全額所得控除の対象になります。
このようにメリットがたくさんありますが、反面気をつけなければならない点もいくつか存在します。
本記事では、小規模企業共済のメリット・デメリット、手続き方法について解説します。
小規模企業共済とは?
小規模企業共済とは、中小機構が運営する中小企業経営者や役員、個人事業主のための退職金制度です。
法人、共同経営者、個人事業主ごとに、それぞれ共済金の種類が設けられています。
国内債券を中心に運用がされており、平均利回りが1%程度と定期預金よりも利回りが多いのが特徴です。
また、iDecoや国民年金基金との併用も可能で、掛け金は全額所得控除の対象となります。
小規模企業共済の加入数
2020年3月時点で、加入数は147万5000人、総運用金額は約9兆7,982億円で、加入数は年々増加しています。
小規模企業共済の満期は?
小規模企業共済に満期はありません。
廃業や契約者の死亡など請求事由が発生すると自動解約となり、共済金が支払われます。
また、任意解約をした場合は契約期間が12ヶ月以上に限り、解約手当金が支払われます。
小規模企業共済の加入資格は?何歳まで加入できる?
小規模企業共済の加入に年齢制限はありません。
基本的に以下の加入資格を満たしていれば、加入することが可能です。
建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業など |
・常時使用する従業員が20人以下の個人事業主、会社等の役員 ・個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで) |
商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) |
・常時使用する従業員が5人以下の個人事業主、会社等の役員 ・個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで) |
企業組合 |
・組合員の数が20人以下の企業組合の役員、 ・事業に従事する組合員の数が20人以下 |
協業組合 |
・常時使用する従業員の数が20人以下 |
農事組合法人の役員 |
・常時使用する従業員の数が20人以下 |
弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員 |
・常時使用する従業員の数が5人以下 |
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済に加入すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
節税ができる
小規模企業共済の掛け金は全額所得控除の対象となります。
そのため、月々貯金するよりもはるかに税金を安く済ませることができます。
特に所得が多い方ほど効果が期待できます。
例えば、年間所得が200万円の人が月3万円支払うと56,900円の節税になりますが、800万円の人だと120,500円も節税できます。
月額1,000円から設定可能
月々に支払う掛け金の最低金額は1,000円、最大で70,000円であるため、加入のハードルは非常に低いです。
また、支払いが厳しくなったら、途中で掛け金を減額することができます。
掛け金の減額には条件がありましたが、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律」により、減額要件は廃止されました。
しかし、減額をするとそれ以前に支払っていた差額分は運用されなくなるため、利回り分損になってしまいます。
掛け金は支払い可能な金額に設定しておくことをおすすめします。
退職金がわりにできる
中小企業経営者や役員、個人事業主に退職金は用意されていません。
しかし、この小規模企業共済に加入すれば、掛け金の払い込み期間が6ヶ月以上でかつ廃業・法人解散・退任した場合に限り、共済金が支払われます。
貸付制度を利用できる
小規模企業共済に加入していると、一定の条件を満たせば貸付制度を利用できます。
売上減少による資金繰り悪化、傷病や被災による経営状況の悪化、転業における資金調達、事業承継など、さまざまなニーズに合わせた貸付制度が用意されています。
|
限度額 |
借入期間 |
一般貸付制度 |
10万円以上2,000万円以内 |
100万円以下:6ヶ月、12ヶ月 105万円~300万円: 6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月 305万円~500万円:6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月 505万円以上:6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月、60ヶ月 |
緊急経営安定貸付け |
50万円以上1,000万円以内 |
500万円以下 : 36ヶ月 505万円以上 : 60ヶ月 |
傷病災害時貸付け |
50万円以上1,000万円以内 |
500万円以下 : 36ヶ月 505万円以上 : 60ヶ月 |
福祉対応貸付け |
50万円以上1,000万円以内 |
500万円以下 : 36ヶ月 505万円以上 : 60ヶ月 |
創業転業時・新規事業展開等貸付け |
50万円以上1,000万円以内 |
500万円以下 : 36ヶ月 505万円以上 : 60ヶ月 |
事業承継貸付け |
50万円以上1,000万円以内 |
500万円以下 : 36ヶ月 505万円以上 : 60ヶ月 |
廃業準備貸付け |
50万円以上1,000万円以内 |
12ヶ月 |
小規模企業共済のデメリット
節税ができたり、貸付制度が利用できたりと、さまざまなメリットがありますが、任意解約をすると元本割れをする、一定の条件を満たさなければ掛け金の減額ができないといったデメリットもあります。
20年以内に解約すると元本割れに
小規模企業共済は、現在1.0%の利率が定められています。
そのため、掛け金総額よりも多い共済金を受け取れますが、加入期間が20年未満で任意解約になると元本割れしてしまいます。
任意解約とは、12ヶ月以上の滞納による解約、法人成りして役員になったことによる解約を指します。
受取時は課税対象となる
掛け金は全額控除の対象になりますが、受取時は課税対象となります。
なお、受け取り方法や受取人によって、税法上の取り扱いが異なります。
退職所得扱い |
・共済金または準共済金を一括で受け取る場合 ・65歳以上の方が任意解約する、または65歳以上の共同経営者が任意退任する場合 ・共済金を一括・分割併用で受け取る場合(一括分) |
一時所得扱い |
・65歳未満の方が任意解約する、または65歳未満の共同経営者が任意退任する場合 ・12ヶ月以上の掛金の未払いによる解約(機構解約)で解約手当金を受け取る場合 |
公的年金等の雑所得扱い |
・共済金を分割で受け取る場合(分割分) ・共済金を一括・分割併用で受け取る場合 |
みなし相続財産 |
・遺族が共済金を受け取る場合 |
小規模企業共済の手続きについて
最後に、小規模企業共済の手続方法について、加入と解約でそれぞれ解説します。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済に加入するには、まず中小機構が提携している商工会議所や青色申告会、金融機関の窓口などで手続きが必要です。(弊社でも申込みを受け付けています。)
なお、手続きは窓口によって異なるため、事前に電話で確認しましょう。
また、加入申請しても加入資格に該当しないとみなされると審査に通らないこともあるため、加入条件をしっかりチェックしてから申し込みましょう。
小規模企業共済を解約する
自己都合により任意解約する場合は、振り込み用の口座がある金融機関で「解約手当金請求書」に確認印を捺印してもらったのち、登録した取扱機関に提出します。
なお、契約期間が12ヶ月を下回っていると、共済金は支払わないのでご注意ください。
まとめ
事業を存続・拡大することに目がいきがちですが、いざというときのセーフティーネットも大切です。
退職金の積み立てだけでなく貸付制度も活用できるので、加入しておいて損はない共済制度です。
ぜひ、この機会に加入を検討してみてはいかがでしょうか。