法人決算とは|決算の手続きの流れと必要書類について
会社にとって重要なイベントの一つである決算。
決算はいわば、年に一度行われる「会社の健康診断」であり、会社の経営状況や財務状況を見える化する業務となります。
本記事では、決算の手続きの流れや必要書類について解説します。
決算とは?
決算とは、一年間の損益を計算し、その会社の財務状況を把握する手続きを言います。
主に決算というと本決算を指しますが、その他に一ヶ月単位で行われる「月次決算」、3ヶ月毎に行われる「四半期決算」、事業年度が半年経過したタイミングで行われる「中間決算」があります。
決算月は一般的に3月とされていますが、明確な定めはなく自分で自由に決算月を決められます。
関連記事:法人の決算月はいつがベスト?決め方をわかりやすく解説
また、株式会社は、決算公告と言い決算の数字を公表することが義務付けられていますが、合同会社では決算公告義務がありません。
ただし、合併や組織変更、減資などを行う場合は公告しなければいけません。
決算をする目的
決算の目的は、大きく3つあります。
株主への業績報告、正確な納税、経営改善です。
決算をすることで、表面的には見えてこなかった経営課題や不正会計なども発見できます。
特に出資をしている株主にとっては会社の動向や経営状況はもっとも知りたい情報となります。
決算公告をすることで、株主や顧客と長期的な信頼関係を構築できます。
決算に必要な提出書類
決算では、決算書の他に総勘定元帳、勘定科目明細書、法人事業概況説明書などさまざまな書類の作成と提出が必要となります。
決算書とは?
別名、財務諸表とも言います。
「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」「株主資本等変動計算書(利益処分計算書)」「附属明細書・個別注記表」の5つで成り立っています。
詳しくはのちほど、決算の流れの章で解説します。
決算に必要な提出書類
決算書の他に以下の書類が必要となります。
- 総勘定元帳
- 領収書綴り
- 勘定科目明細書
- 法人事業概況説明書
- 消費税申告書
- 法人税申告書・地方税申告書・法人事業税申告書
- 税務代理権限証書
領収書は、必ずしも紙でなくても構いません。
支払金額、支払日、支払い項目など、内容が確認できれば問題ありません。
万が一、領収書を紛失しており、経費の証明ができない場合は、否認扱いとなり、支払う税金が増えるので、日頃からきちんと保管しておきましょう。
なお、領収書も帳簿書類とみなされ、7年間の保管義務が生じますので、決算が終わっても破棄しないようにしましょう。
また、下記の書類があると決算をスムーズに進められます。
【準備書類一覧】
- 取引帳票
- 棚卸表
- 履歴事項全部証明書の写し
- 銀行残高証明書
- 従業員の賃金台帳
- 預金通帳の写し
- 現金出納帳
- 借入金の返済予定表
- 賃貸借契約書の写し
- 預金出納帳の写し
- 当期の当座照合表 など
なお、法人形態や業種、決算内容によっては、必要書類が異なります。早めにこれらの書類を準備しておきましょう。
決算の流れ
決算の流れは、大きく「取引記帳の確認」「試算表作成」「決算整理仕訳」「決算報告書の作成」「申告書の作成」「申告納税の手続き」の6つの手順に分かれます。
それぞれ詳しく解説します。
取引記帳の確認
作成をした当年分の取引記帳が間違いないかチェックします。
誤りがある場合は、次のステップ、決算整理仕訳で修正作業を行います。
決算整理前試算表の作成
決算処理の前に、決算整理前試算表を作成します。
これは、すべての勘定を試算表に集めて、賃借の合計額が一致するか確かめるものです。
これを作成することで、事前に入力ミスを防げます。
決算整理仕訳
決算整理仕訳とは、適切な損益計算書や賃借対照表を作成するために、最終的な修正を行う手続きです。
主に確認する項目は以下の通りです。
- 預金勘定の残高と銀行残高の過不足確認
- 現金の過不足確認
- 見越し・繰り延べ処理
- 減価償却費の計上
- 売上原価の計算
- 消耗品の振替え
- 引当金の計上
決算整理後試算表の作成
修正を反映した総勘定元帳の記録をもとに、決算整理後試算表を作成します。
ここでは、総勘定元帳の転記内容の正確性をチェックします。
決算書の作成
つづいて決算書を作成します。法人決算では以下の書類の作成が必要となります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
- 株主資本等変動計算書(利益処分計算書)
- 附属明細書・個別注記表
以上のうち、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」は財務三表と呼ばれ、非常に重要な書類です。
「附属明細書」と「個別注記表」は両者とも、賃借対照表や株主資本等変動計算書など、計算書類の内容を補足説明するものになります。非公開会社では多くの項目を省略できますが、会計監査人設置会社では全ての項目の記載が義務付けられています。
申告書の作成/申告納税の手続き
提出する申告書は、消費税申告書、法人税申告書、地方税申告書・法人事業税申告書の3つです。
また提出先はそれぞれ異なり、消費税申告書と法人税申告書は管轄の税務署、地方税申告書・法人事業税申告書は都道府県税事務所、市町村役場となります。
なお、提出期限は申告期限の延長をしていない場合は決算日から2ヶ月以内です。
決算修正
万が一、すでに決定した決算内容に間違いが発覚した場合は、すみやかに前年度分の申告内容について決算修正をしなければいけません。
ちなみに、過少申告をしており、追加で税金を支払う場合は修正申告が、税金を多く納めていた場合は更正の請求が必要です。
すでに提出した決算書を遡って修正はできないため、当期において「前期損益修正益」で調整をします。
ただし、これは中小企業に限った話であり、大企業は「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に従い、利益剰余金を増額し修正再表示する形で修正を行わなければいけません。
修正申告に関しては、延滞日数に伴って延滞税が課されます。
さらに、税務署からの通告により修正申告をした場合は、過少申告加算税も課税されるので、間違いに気付いた時点ですぐに申告しましょう。
関連記事:税務調査でどこまで調べる?調査時期や期間、流れについて解説
まとめ
ここまでいかがでしたか?
決算業務は、作成する書類の数も多く、専門的な財務知識が必要となります。
もし、決算業務をおろそかにして、間違いに気づかないままになってしまうと、税務署から税務調査が入り、延滞税や、また悪質と認められた場合は、重加算税が課されることも。決算については、面倒くさがらずに予備知識をつけておき、可能な限り税理士や会計士などの専門家へ依頼しましょう。
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