青色申告特別控除とは?どこから引く仕組み?計算方法や要件をわかりやすく解説
確定申告には、大きく白色申告と青色申告の2つの方法があります。青色申告は、基本的に複式帳簿が必要となりますが、白色申告と比べると税制上の優遇措置があります。本稿では、青色申告特別控除の概要、対象要件や計算方法について解説します。
青色申告特別控除とは?
青色申告特別控除とは、青色申告者が各種要件を満たすことで税制上の優遇措置を受けられる制度です。確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、青色申告の方が手続きが煩雑な反面、税制優遇を受けやすいメリットがあります。
控除額は65万円・55万円・10万円の3種類で、基礎控除の48万円と合わせると最大で113万円の控除を受けることができます。
青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告では、確定申告で提出する書類の種類が異なります。白色申告は決算手続きがシンプルな単式簿記で簡単な反面、特別控除手続きが受けられず、所得が高くなると税負担も増えてしまう可能性があります。
また、青色申告で認められている赤字繰り越しも行えません。特に、収入が安定しにくいフリーランスや個人事業主では、白色申告のままでいると、資金面で大きな負担となる恐れがあります。
青色申告特別控除と基礎控除の違い
基礎控除は、所得のある人に対して一律に適用される控除です。基礎控除の適用を受けるには確定申告が必須です。2019年までは所得額に関わらず一律で38万円でしたが、2020年からは所得額合計が2,400万円以下の人は48万円に引き上げられました。
基礎控除額は住民税の計算に使用される「43万円」と、所得税額の計算に使用される「48万円」の2種類がありますが、青色確定申告の書類には48万円の金額を記入します。
なお、基礎控除分は青色申告特別控除分と合わせて98万円を超えた際、住民税課税の計算要素となる点にも注意してください。
青色申告特別控除の対象要件
青色申告特別控除を受けるためには、以下に記載された対象要件を満たさなければなりません。
青色申告特別控除で65万円控除を受けられる条件
複式簿記をしている
複式簿記とは、取引内容を多面的、詳細に仕訳して記帳する方法です。一度の出入金に対する仕訳に対し、複数の勘定科目が使われることから複式簿記と呼ばれています。一方、単式簿記は現金の流れのみに着目したもので、金銭出納帳や取引先別の売掛帳などがこれに該当します。
事業所得または不動産所得(事業的規模)がある
事業所得または不動産所得(事業的規模)があることも、青色申告特別控除を受けられる条件の1つです。事業所得とは、小売業や製造業、農業、漁業などの事業を営む人が事業によって得た所得を指します。
不動産所得は、土地や建物、借地権、船舶などを貸し付けてその賃料で利益を上げている所得のことです。事業的規模とは、具体的にはアパートやマンションでは10室以上、貸家では5棟以上などと定義されています。
現金主義ではない
現金主義とは、現金の移動があったタイミングで記帳を行う方法を指します。例えば、12月20日に商品を販売し、その支払いが翌月末だとすると、売上の日付は翌月1月31日となります。
もっとも、現金主義を適用できるのは前々年の不動産所得と事業所得の合計額が300万円以下の小規模事業者に限られており、かつ特別控除も10万円控除しか利用できません。そのため、発生主義に基づいた複式簿記で記帳することをおすすめします。
期限内に必要書類を提出している
青色申告特別控除の適用を受ける場合、適用を受ける年の3月15日までに以下の書類を所轄の税務署に提出しなければなりません。3月15日が土日祝日では、翌平日が提出期限となります。要件を満たしていなかったり、提出期限に間に合わなかったりした際には、発生主義の計算に基づいて課税額が決定されます。
- 現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書
- 所得税の青色申告承認申請書兼現金主義の所得計算による旨の届出書
e-Taxによる申告(電子申告)または優良な電子帳簿の保存要件を満たしている
確定申告の際にe-Taxによる申告を行うか、「優良な電子帳簿」の保存要件を満たしていなければいけません。なお、電子帳簿として認められるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 記録・作成の段階から一貫してパソコンを使用している
- 使用システムに関する概要書や取扱説明書などの備え付けがある
- ディスプレイやプリンタなどの出力・見読装置が備え付けられており、記録事項を明瞭な状態で、速やかに画面または書面に出力できる
- 税務職員などからダウンロードを求められた際に応じることができる
青色申告特別控除で55万円控除を受けられる条件
65万円控除と55万円控除の違いは、e-Taxによる申告(電子申告)または優良な電子帳簿の保存要件を満たしているか否かです。その他条件は65万円控除と共通です。
青色申告特別控除で10万円控除を受けられる条件
10万円の青色特別申告控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 記帳に基づいた申告を行う
- 確定申告書に青色申告決算書を添付して申告する(貸借対照表は不要)
なお、10万円控除では現金出納帳や売掛帳などの単式簿記でも認められています。
青色申告特別控除はどこから引く?計算方法について
青色申告特別控除を適用する際は、損益計算書に基づいて所得金額を算出しなくてはなりません。基本的な計算式は次のとおりです。
青色申告特別控除前の所得金額-青色申告特別控除=所得金額 |
事業収入600万円、経費100万円、青色申告特別控除65万円と仮定すると、次のような所得金額になります。
|
この435万円に対して所得税が課税される仕組みです。
青色申告特別控除の申請手続き・必要書類
青色申告特別控除を申請する際には、確定申告書の第一表および第二表、青色申告決算書を提出します。記載内容はそれぞれ以下のとおりです。なお、10万円控除では貸借対照表の提出は不要となります。
書類名称 |
内容 |
確定申告書 |
第一表:年間の収入や所得、控除金額、税額など |
青色申告決算書(一般用) |
<損益計算書(1枚目)>
<損益計算書(2枚目)>
<損益計算書(3枚目)>
<貸借対照表>
※原材料費や製造経費がある場合は、製造原価の計算も記入 |
青色申告特別控除でよくある質問
確定申告の期限後に提出したら、青色申告特別控除は適用される?
確定申告の期限に遅れた場合、法人と個人事業主ではその後の流れが異なります。法人では、2期連続で確定申告期限を守られなかった場合は、青色申告の承認が取り消されてしまいます。
それに対して、個人事業主では特にペナルティは科されません。
また、事業継続や生活が困難になる、災害による財産の損失など特別な事情がある場合は、納付の猶予が認められることがあります。
青色申告特別控除と給与所得控除は併用可能?
青色申告特別控除と給与所得控除を併用することは可能です。
例えば、家族と共に事業を営んでいる場合、必要経費として「青色事業専従者給与」を必要経費として計上できます。
また、個人事業を営んでいる場合は、事業売上から必要経費を差し引いて所得税が算出されます。ダブルワークや副業をしている会社員は、給与所得控除と青色申告特別控除を併用すると大幅な節税が見込めるでしょう。ただし、具体的な計算方法は非常に複雑であるため、専門家に相談するのがベターです。
赤字だと青色申告特別控除はどうなる?
青色申告者は、赤字でも確定申告をするのがおすすめです。ここでいう赤字とは、損益計算書上において「青色申告特別控除前の所得金額」がマイナスになることを意味します。
なお、所得税課税は発生しないため、確定申告義務はありません。もっとも赤字に転じたからといって、ただちに青色申告が取り消されるわけではありません。
この場合、他の所得との通算を行います(損益通算)。仮にダブルワークをしていて、会社からの給与所得と相殺するとトータルでは黒字になることがあり、確定申告を行えるケースがあります。
純損失があるときはその損失額を翌年以後最長で3年間繰り越し、各年分の所得金額から控除することも可能です。
まとめ
青色申告特別控除の対象要件や計算方法は非常に複雑です。給与所得控除との併用を考えている場合は、さらに専門的な知識が求められます。青色申告特別控除に関することで不明点がある方は、ぜひ税理士や会計士などの専門家にご相談ください。
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